【記者解説】プチデモン氏の発言の背景は? 沖縄への影響は?


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 スペイン・カタルーニャ自治州のカルラス・プチデモン前州首相が沖縄の状況について「民意に耳を傾けるべきだ」と踏み込んだ発言をした背景には、沖縄とカタルーニャに共通点が多いことがある。どちらも独立国としての歴史があり、国内の他地域とは違った独自の文化を持つ。近代までに中央集権型の国民国家に統合され、言語や文化など民族アイデンティティーを否定されるなど、抑圧を受けてきた。

 近年、中央政府が民意に耳を傾けない中で自己決定権回復を求める声が高まっている点でも類似している。2006年にカタルーニャ自治州の自治権を拡大した新自治憲章がスペイン国会で成立したが、10年になって当時の国民党政権が裁判所に憲章は「違憲」と申し立て、最高裁も違憲と判断した。カタルーニャの住民は一斉に反発し、世論調査で独立に賛成する人の割合が急増、約半数に達した。

 沖縄では辺野古新基地建設を巡り、選挙や県民投票で反対の民意を示しても日米両政府は耳を貸さない。

 プチデモン氏はベルギーから欧州議会議員選挙に出馬し、連日、映像を通してカタルーニャ独立運動への支持を呼び掛けて当選した。「独立派の顔」と呼ばれ、影響力を保つ。事態を打開する鍵として同氏が国際社会への働き掛け、少数派同士の連帯を挙げた点も、翁長雄志前知事が国連で演説した近年の沖縄の動きに通じる。

 EU司法裁判所はプチデモン氏当選の有効性を事実上、認める判断を示した。国家に抑圧される少数者の代表としてプチデモン氏が欧州議会で発言すれば、同じ課題を抱える沖縄にも光が当たる契機となるはずだ。

(宮城隆尋)