豚やイノシシの感染症、豚コレラに感染した豚が県内で33年3カ月ぶりに確認された。沖縄の養豚業や豚肉文化を守るため県は国内で猛威を振るう豚コレラ侵入の水際阻止に力を入れてきたが、感染を許したことに関係者の動揺は大きい。発生施設にウイルスを封じ込める迅速で確実な初動防疫の徹底とともに、感染経路の解明も急がれる。
県は農水省の特定家畜伝染病防疫指針を基に作成したマニュアルに沿って初動防疫を取っている。殺処分や畜舎消毒など初動で人員を大量動員して短期間での終息につなげる方針だ。
だが、農家が豚の異常を県に通報するまでに時間差があったことなど、既にウイルスが広がっていないか懸念を残している。
県はこれまで数多くの豚コレラ対策の説明会や農家の指導を行い、農場にウイルスを侵入させない防疫体制に取り組んできた。それでも発生した以上は、これまでの対策に穴がないかを検証する必要がある。
県外では野生のイノシシを媒介した陸続きの感染が考えられているが、海を隔てた離島県の沖縄での発生について県畜産課の仲村敏課長は「一般的にイノシシが海を渡るとは考えにくい。汚染された何らかの物品や人が周辺農場の近くにあったのでは」と指摘する。
人や物にウイルスが付着してウイルスが運び込まれたのが感染経路だとすれば、畜舎やえさの衛生管理の周知、徹底に不備があったといわざるをえない。空港や港での水際防止だけでなく、県内に多い小規模農家にも実践ができるように防疫対策を浸透させていく必要がある。
国内で豚コレラが終息しないことを受けて、政府は積極的なワクチン接種に方針を転換している。他府県では未発生地域であっても予防的なワクチン接種が広がっている。発生地域となった沖縄でもワクチン接種の是非が今後の焦点となるが、消費者の反応などから接種に抵抗がある農家も多い。封じ込めに成功するかが沖縄の畜産業の行方を左右する。
(石井恵理菜)