世界遺産登録目指す西表島、入島人数の上限設定へ 沖縄県が方針


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生い茂るマングローブ林の回廊=2019年12月、西表島(又吉康秀撮影)

 「奄美大島、徳之島、沖縄島北部および西表島」の世界自然遺産登録を目指す沖縄県は、持続可能な観光の在り方に向けて年度内に策定する「マスタープラン」で、竹富町西表島への観光客の入島人数に上限を設ける方針を固めた。上限は規制値ではなく目標値とする一方、定期的に入島状況をモニタリングする計画。世界自然遺産登録で島を訪れる観光客数が増えることが予想されるため、自然環境への過大な負荷を避ける狙いがある。

 30日に西表島の関係団体を交えた地域部会を開催し、上限の具体的な人数を決定する。世界自然遺産登録の可否を判断する国際自然保護連合(IUCN)は今夏に可否を決める予定。県はその前にマスタープランを策定し、英訳した上でIUCNに内容を伝達し、登録後の環境保全策について理解を得たい考え。

 入島人数の制限については、日本自然保護協会などがIUCNに導入を勧告するよう求める要望書を2019年に提出している。

 西表島では天然記念物であるイリオモテヤマネコのロードキル(自動車事故)問題などもあり、観光客の増加が予想される世界自然遺産登録自体に後ろ向きな声もあった。こうした中、県は入島人数の上限を設定することで、地元西表の関係者から広く合意形成と自然遺産登録に向けた協力を得る狙いもある。

 やんばる地域に関するマスタープランの案では、世界自然遺産の推進地となっている森林の中心部については入域にガイドを随伴することなどを推奨する方針。森林の外縁部は観光客の誘致を積極的に行い、地域振興につなげる一方、希少動植物が多く生息する中心部はプロのガイド随伴などによって自然環境へのダメージを抑える狙いがある。

 西表の入島人数の上限設定に関しては、マスタープランの策定に携わる地域部会にフェリー会社なども参加しているため、民間企業とも連携しながら実効性を担保したい考えだ。 (島袋良太)