なぜネトウヨが出てくるのか 排外主義にどう立ち向かうか 樋口直人氏(徳島大准教授) 報告・人権啓発集会から


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 なぜネトウヨが出てくるのか。かつては生きづらい若者が不遇状況へのはけ口として排外主義に行き着くというイメージがあったがそうではなかった。誤った議論では対策が的外れになる。そのため、実際は違うというデータを集めた。

 この場合は三つ。2015年末に安倍晋三首相を批判したフェイスブックユーザーのネトウヨに関するデータ、在日特権を許さない市民の会の34人から聞き取った調査、首都圏住民7万7084人に対する調査を集めた。そしてこの10年で進んだ右派運動、排外主義運動の研究を総合した。

 安倍さんに抗議したネトウヨで確実に言えるのは男性が多く、若者ではない。40代をピークとする働き盛りで学歴の高いホワイトカラーの文化と親和性が高い。若者の不遇よりも普通の保守の人たちが持つ排外性に注目すべきだ。

 排外主義の入り口は「近隣諸国」と「歴史問題」がある。右派にとって歴史と近隣諸国の問題をネットで劣化コピーしたのが排外主義やネトウヨのイデオロギーだ。これに保守政治がお墨付きを与えている。

 在特会による徳島県教組襲撃事件の裁判資料をみると、彼らは在日コリアンを排斥するための大義名分で募金詐欺だとしてどう喝した。実際は事実誤認。詐欺があって襲撃という因果関係もなく、排斥する理由を付けただけ。転倒した因果関係だ。理由に根拠がないので説得は意味がない。

 何をすればいいか。ヘイトスピーチという言葉の定着とカウンター行動がヘイトスピーチ解消法の政策過程を進めた。ヘイトスピーチをやっちゃいけないということは排外主義者にとっては痛い。在特会が力を無くしたのは象徴的だ。ただ法の実効性の弱さがある。自治体レベルでの条例制定などの広がりが必要だ。