首里城木彫刻の復元資料を寄贈 92年の復元で木彫刻を担当した彫刻家の下絵、メモ500点


首里城木彫刻の復元資料を寄贈 92年の復元で木彫刻を担当した彫刻家の下絵、メモ500点
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 1992年の首里城復元で、木彫刻を担当した石川県金沢市の彫刻家で、2014年に77歳で亡くなった今英男(いま・ひでお)さんが残していた首里城の木彫刻の下絵と作業メモ、作業の様子を撮影した写真など資料約500点が24日、県に寄贈された。寄贈したのは生前、今さんから資料を譲り受けた、石川県白山市でギャラリーを経営する村上弥生さん(55)。

 下絵は正殿にあった龍や獅子の木彫刻の基になった7点。首里城の彫刻物の復元に携わった琉球大名誉教授の彫刻家、西村貞雄さん(77)の署名が記された下絵もある。今さんは下絵などを基に石川県や沖縄県で復元作業をしたという。

 村上さんは04年、展覧会を通じて今さんと出会い、今さんが14年に亡くなるまで親交を深めた。10年ほど前、自身のアトリエを引き払った今さんから資料を譲り受け、沖縄在住の叔母、田端温代(はるよ)さんに送ったという。田端さんは18年11月に亡くなった。

 昨年10月31日、首里城が焼失したため「無くなると取り返しがつかなくなる」と考え、田端さんの夫から資料を送り返してもらい、県に寄贈することにした。

 村上さんは「譲り受けた時は首里城が焼けるとは夢にも思わなかった。ぜひ復元に役立ててほしい」と願った。沖縄県立博物館・美術館の田名真之館長は「貴重な資料でありがたい。復元は国が主導するが、国と協力しながらぜひ有効活用したい」と感謝した。

故今英男さんが残していた木彫刻の下絵や作業メモなど資料を沖縄県に贈呈した村上弥生さん(中央)=24日午後、那覇市の県庁