空手 部員一人でも奮闘、本部高の喜屋武柚希 重量挙げにも挑戦


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一人で稽古する喜屋武柚希と見守る父の敦さん=本部高体育館

 本部高2年で同校空手部ただ一人の部員の喜屋武柚希(16)が奮闘している。昨年10月の県新人大会の女子形で2位、11月の九州新人大会でも準優勝と結果を残している。他校、他流派への異例の出稽古、全く経験のなかった重量挙げへの挑戦など周囲の協力や環境による支えも大きい。8強入りを狙っていた春の全国選抜は中止となったが、感謝を成果で示したいと、全日本空手道連盟が指定するナショナルチームジュニア強化選手を目指す。

 ■空手漬けの日々

 父の敦さんが2012年に道場を開いたことをきっかけに、小学3年生で空手を始めた。小学4年生で初めて小林流の県大会に出場して準優勝。しかし優勝できずに「大泣きした」と悔しさの方が大きく、以来稽古にのめり込むようになった。

 自宅の庭の木にぶら下げた砂袋で組手の練習をしたり、近くの浜辺で走り込んだり、小学生の頃から一人での稽古がほとんど。敦さんは「いつ見てもサボっていない」と娘の努力を認める。5、6年生で流派の県大会で優勝。本部中1年生でも県大会を制して全国出場を果たすなど、頭角を現した。

 しかし、中体連や高体連主催の大会では、沖縄の形の多くが認められていない。所属する小林流も例外ではない。そのため、父の敦さんとともに他流派の形も研究、見よう見まねで反復練習してきた。

 本部高に進学後は県空手道連盟の比嘉良徳理事の仲介で、ほかの高校や道場へ毎週末に出向き、他流派の先生に教えを請うようになった。1度の出稽古でノートはメモで埋まり、自分の練習の時に反すうする。九州新人の際、剛柔流のクルルンファで出した高得点は出稽古の成果でもあった。

 ■重量挙げ挑戦

 昨年9月からは重量挙げで全国トップクラスの本部高ウエイトリフティング部の練習にも参加している。同部の比嘉敏彦監督から誘いがあり、空手のトップ選手が取り入れていると聞いたことがあったことも動機になった。「拳の突きを上に出すイメージ」と笑うが、瞬発力と下半身の安定に効果があると感じている。同校重量挙げ部で全国ランキング1位の仲宗根夢来(めぐ)ともライバルとして高め合ってきた。仲宗根もただ一人の女子部員で「夢来がいるから自分も頑張れる」と支え合う。ことし1月、重量挙げの九州選抜には共に出場を果たした。

 空手の全国選抜は中止になり「結果を出して今後につなげたかった」と落胆は大きい。とはいえまだ2年生。「最後のチャンスということではない。調整期間が長くなっただけ」と焦らずに前を向く。

 ナショナル強化選手を選考するため4日に都内で開催予定だった全日本空手道連盟の1次選考会は延期となり、新たな日程での開催を待ちわびる。「周囲からの一つ一つが力になってきた」と話すように、出稽古の指導や地域からの応援など周囲の支えを推進力に変えてきた。強化指定決定の吉報で報いる日を目指し、ひたすらに己と向き合う。 (古川峻)