国「唯一の解決策」固執 軟弱地盤、サンゴで停滞 辺野古護岸着工3年


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防衛省が県に設計変更を申請した名護市辺野古の新基地建設現場=22日、名護市のキャンプ・シュワブ沿岸

 米軍普天間飛行場の移設に伴う名護市辺野古の新基地建設で、政府が護岸工事に着工して25日で3年が経過する。埋め立て予定地の大浦湾に広がる軟弱地盤と多様性に富むサンゴ類が広がっているため、政府は護岸工事を進められず埋め立て工事全体に影響を及ぼしている。このまま進めても工事の長期化と費用の増大は不可避だが、政府は辺野古移設が唯一の解決策として固執している。

 沖縄防衛局は2019年度末、軟弱地盤のある大浦湾側の護岸・岸壁工事6件を打ち切った。最初に着手した護岸の建設が3分の1(100メートル)程度、進んだだけで、残り5件は軟弱地盤の存在が見つかったため未着工だ。

 護岸・岸壁工事の最終支払額は約303億円。当初契約の1・4倍を超える224億7785万9千円で契約を終えていた工事もあった。防衛局は今後、軟弱地盤に対応するため構造を大きく変えて発注し直す構えだ。

 防衛局は元々、大浦湾側に建設した岸壁を使って埋め立て工事現場に土砂を持ち込む計画だった。だが軟弱地盤の存在で岸壁を建設できず、護岸の一部を使って陸揚げ場所とした。当初の約束と異なるとし、県は問題視してきた。

 それでも陸揚げできる場所は2カ所のみで、搬入ペースは限定的だ。いくら土砂の搬出を加速させても陸揚げ場所が限られていれば、作業効率は上がらない。その結果、軟弱地盤がなく、先に護岸を造ることができた辺野古側の埋め立て工事も停滞した。県の試算によると、1月末時点で投入された土の量は事業全体の約1・6%にとどまる。

 現在、土砂を投入している二つの区域のうち、19年3月に着手した区域は今年8月までだった工期を来年9月までの1年余り延長した。工費も約58億円増の316億6156万円に膨らんだ。

 陸揚げ場所を増やすには、現在使っている護岸K8を拡張したり、別の護岸N2を造成して使ったりする方法がある。だが予定地には保護対象のサンゴ類が生息しているため、県からの移植許可がなければ工事はできない。

 サンゴ移植については総務省の第三者機関・国地方係争処理委員会で審査が続いている。また、軟弱地盤に対応するため政府は設計変更の承認を県に申請したばかりだ。軟弱地盤とサンゴを巡り、法廷闘争も見据えた二つの「闘い」が並行して進む。政府にとっての二つの「支障」は、県にとっては新基地建設阻止につなげる踏ん張りどころでもある。
  (明真南斗)