「来月で終わりだから」突然の退職通告 シングルマザーに突きつけられる現実


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派遣先の会社から契約を切られ、厳しい生活状況を訴えるシングルマザーの女性=4月、那覇市内

 新型コロナウイルスの感染拡大で全都道府県を対象にした緊急事態宣言が出てから約1カ月。休業や休校などの影響で経済的に厳しい状態に追い込まれる人たちが急増している。特に深刻な状況に陥っているのがシングルマザー、母子家庭の世帯だ。

 「来月で終わりだから」。沖縄県那覇市に住むシングルマザーの30代女性は3月末、派遣先のレンタカー会社のエリア担当男性に仕事中呼び出され、突如こう通告された。3カ月更新で約2年働いた職場、契約終了まで1カ月残っていた。「これからどうやって生活すればいいのか」。小学校に入学したばかりの子どもがいる女性は、目の前が真っ暗になった。耐えられず休憩室に駆け込み一人泣いた。

 伏線はあった。3月ごろから非正規の同僚が次々と職場を去って行った。30人ほどいた職員は2人になっていた。4月に入ってまもなく、女性はさらに追い詰められた。担当の男性から「来週から来なくていい」と言い渡されたからだ。有給を使いながら就職活動をするつもりだった。派遣会社が入り何とか4月まで働けることになった。

 職探しも困難を極める。ハローワークに行くも、看護師や医療関係、配達員といった求人が多く、できる仕事はなかなか見つからない。求人募集を見つけ数時間かけて複数の派遣会社に登録するも、いざ応募に進むと「採用保留」と表示されることがほとんど。女性は「残業ができないというだけで、はじかれる。ひとり親というだけで、ハードルが上がる」と話す。

 母子家庭は、非正規で働く母親が多いため平均収入は少なく、貯蓄もない家庭も多い。女性も同様で貯金がほとんどなく、親も生活が厳しく頼ることが難しい。家賃や食費、光熱費などに加え、アトピーである子どもの医療費、放課後児童クラブ(学童保育)での食費など出て行くお金も多い。「食費を削るしかない」と、今は生野菜や精肉を避けレトルト食品や冷凍食品を増やした。しんぐるまざあず・ふぉーらむ沖縄が実施した食品お渡し会にも足を運んだ。「あと1回、給与が出る。失業手当だけでは生活できない、それまでに仕事を探さないと厳しい」。女性の目から涙があふれた。