船長がキッチンカーで鮮魚店 濃厚マグロ、ぷりぷりのイカ…たちまち地元の評判に


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遊漁船船長からキッチンカーで鮮魚を売る仲村茂樹さん=名護市宇茂佐(写真は2枚とも本人提供)

 【名護】濃厚なマグロにぷりぷりのイカ―。沖縄県名護市宇茂佐で刺身や魚介類の加工品をキッチンカーで販売する「仲村商店」が話題を呼んでいる。店主の仲村茂樹さん(39)=名護市=の本業は、本部町浜崎漁港にある遊漁船の船長だ。新型コロナウイルスの拡大に伴い、遊漁船を自粛、人脈を生かして始めた鮮魚店で海人(うみんちゅ)も支援している。

 仲村さんの遊漁船はロウニンアジやアオリイカなど大物を釣らせることで、県内外はもちろん海外から訪れるファンも多かったが、3月中旬ごろから新型コロナウイルスの脅威が忍び寄った。

 次女の百恵ちゃん(2)はぜんそくがあり、実父の茂夫さん(70)も肝臓の持病で基礎疾患がある。「自分の仕事が原因で、万が一家族に何かあったら…」と、遊漁船の仕事を自粛することを決断。3月20日に全ての予約を断り休業した。

鮮魚店の「仲村商店」で取り扱う刺身などの鮮魚

 それでも家族を養うためには収入がいる。自ら魚を釣ってセリに出す漁業に切り替えようとしたが、飲食店やホテルも休業しており、魚の価格が暴落していた。良い魚を釣っても、平常時の3分の1の値段しか付かなかった。

 仲村さんだけでなく、周りの漁師仲間も収入減で苦しんでいた。「地元消費に向けて、思い切ったことをやってみよう」と考え出したのが、魚を仕入れて消費者に届ける小売販売だった。保健所から営業許可を取り、キッチンカーを整備、約1カ月かけて準備を整えた。4月末、名護市の自宅の駐車場でキッチンカーで鮮魚を販売する「仲村商店」を開店させた。

 北部地域の漁師仲間から新鮮な魚介類を下落前の平均価格で買い取ってさばき、刺身だけでなくイカスミ汁の調理セットやイカの塩辛、貴重な本部産のモズクなど加工品も手掛けた。店は徐々に地域の話題となり、今では毎日ほぼ完売する盛況ぶりだ。

 仲村さんは「沖縄にもおいしい魚があることを、地元の人に知ってほしい」と語る。「コロナが落ち着いたら、中部や南部にも移動販売しに行きたい」と、意欲を見せた。

 「仲村商店」は名護市宇茂佐の森2の4の4あだね川公園前駐車場のそば。白地に青のキッチンカーが目印。販売する魚はLINEで配信。不定休。
 (仲本文子)