豚熱ワクチン、今後2年は接種が必要 識者「管理意識さらに高めて」


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県獣医師会会長・工藤俊一氏

 豚熱(ぶたねつ)(CSF)の再発防止に向けた予防的ワクチンの初回接種が終わったが、今後も継続して接種しなければならない。ワクチン接種は、野生イノシシの感染リスクがある地域や、養豚場が密集している地域などで認められている。ワクチン接種を終えるには、地域に感染リスクがないことを確認し、農水省の有識者委員会で終了の承認を得る必要がある。

 初回の接種後は、種豚となる「繁殖豚」は半年後に1回打ち、その後は1年置きに接種することになる。肉豚として出荷される「肥育豚」は生後6カ月で出荷されるため、1回の接種となる。

 接種期間について、県畜産課は「当面中止することはない」とし、感染リスクが排除された場合に終えるとしている。その上で飼養衛生管理基準の徹底に向けて取り組むとする。

 県獣医師会の工藤俊一会長は「限定した地域で発生したため、ワクチンの接種期間の目安は2年間と見ている」と話す。

 他県では野生のイノシシがウイルスを広げてしまい、根絶対策が難しい面がある。

 県内でもうるま市より北の地域に野生イノシシが生息するため、イノシシを介した感染リスクはいまだ否定できない。

 ただ、現状で野生イノシシの感染事例もないため、他県より早い期間で接種を終える可能性があるという。

識者談話 県獣医師会会長・工藤俊一氏

 初回接種が終わり、ひとまず安心した。豚熱(ぶたねつ)(CSF)の発生を教訓に、県内農家の飼養衛生管理の意識が高まり、防疫体制が強化されていると感じる。だが、ワクチンを接種しても全ての豚が免疫を獲得するとは限らない。2回目の接種を行う間に感染すると、発生農場は全頭殺処分になる。

 また、今回発生した豚熱は病原性が比較的弱く、症状が分かりにくい場合があった。国内未発生のアフリカ豚熱(ASF)の感染リスクもある。伝染病はいつ侵入するか分からない。今回の発生を教訓に、飼養管理をさらに高めていく必要がある。

 ワクチン接種にかかる費用は2回目以降、農家の負担だ。新型コロナウイルスの影響で農家にも経済的な影響が生じている中、接種費用は農家にとって経済的な負担となるだろう。

 なるべく早く接種を終えて、農家の負担を軽くする必要がある。