慰霊祭縮小でも「平和の祈りと追悼変わらぬ」 遺族ら子孫への継承誓う


この記事を書いた人 Avatar photo 琉球新報社

 戦後75年の節目となることし、新型コロナウイルス感染症の拡大防止のため、多くの自治体が慰霊祭の中止や縮小を決めた。中止した自治体では献花のみなど異例の形となった。自治体関係者らは「仕方がないが残念だ」と肩を落とす一方で「戦没者を悼む気持ちは変わらない」と、平和を尊ぶ思いを強くする。

献花台に花を供え沖縄戦の犠牲者を追悼する与那原町遺族会の知念勇吉会長(左から2人目)ら=21日、与那原町の軽便与那原駅舎展示資料館

 規模縮小の方向で検討している本部町の遺族会の我部政寿会長(76)はこれまで、高齢で外出が困難な遺族会員らの思いを背負い参列してきた。規模縮小で自身の参加も難しくなる可能性に触れ「仕方がないが、みんなのためにも毎年参加していたので非常に残念な気持ちだ」と嘆いた。

 「大きな節目の年にみんなで祈りたいが、命には代えられない」と語るのは北谷町遺族会の宮里友常会長(71)。本来ならば毎年100人を超える関係者が参列するが、今年は規模を大幅に縮小し6人前後で執り行う。「参加できないみんなの分も祈りたい」と思いを込めた。

 与那原町は21日に予定していた町主催の式典を中止し、自由参拝とした。与那原町遺族会の知念勇吉会長(74)は「みんなで祈りをささげられないのは残念だが、新型コロナのことを考えると仕方ない」と話す。ただ「平和の尊さと戦争の愚かさに思いをはせ、戦没者を追悼する気持ちには変わりはない。式典がなくても、子や孫にそのことを伝えられるようにしたい」と前を向いた。

 沖縄戦に詳しい吉浜忍沖縄国際大元教授(70)は、参列者は高齢の戦争体験者や遺族も多いため「入念な感染防止対策が必須。規模の縮小もやむを得ない」と理解を示す。その上で、慰霊祭には戦没者の追悼や不戦の誓い、史実継承などの意義が込められているとし「遺族や子どもたちのためにも、沖縄戦や平和と向き合う機会は非常に大事だ。工夫しながら可能な範囲で慰霊祭を開催するべきだ」と述べた。