「無知の残酷さを知った」 愛楽園訪問者の感想文集発行


「無知の残酷さを知った」 愛楽園訪問者の感想文集発行
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 名護市済井出の沖縄愛楽園自治会(金城雅春会長)と同交流会館はこのほど、同園を訪れた人々の感想文集第1号「手をつなぎともに生きる社会へ」を発行した。交流会館が開館した2015年6月から16年3月末までの約1年間に来館者から寄せられたアンケートをまとめた。「心が痛い」「無知の残酷さを知った」など率直な思いや「次世代に伝える」など、元患者へ寄せる思いがつづられた。金城会長は「社会や人権、命について考える一助になればうれしい」と語った。

 交流会館は2015年の開館以来、ハンセン病に関する問題を社会に幅広く伝えてきた。常設展示は元患者らの暮らしぶり、強制断種・堕胎で苦悩した証言などが写真や映像で展示される。自治会が主体となり、約6年かけて展示物を作り上げた。感想文集は常設展や企画展、イベントなど項目ごとに整理した。全164ページで600部を発行する。

 感想文には「ハンセン病問題について知らないことが多くて驚いた」「無知が多くの人を傷つけてきたことに気付かされた」など、新たな知識を得たことに関するコメントが寄せられた。「差別を繰り返さない」と誓う言葉もあった。「胸が張り裂けそうだ」「申し訳ない気持ちでいっぱい」など、ハンセン病に対する社会の過ちを謝罪する内容も多かった。

 交流会館学芸員の辻央(あきら)さんは「ハンセン病もそうだったように、今は新型コロナウイルス感染を恐れる余り、他者を差別、排除する状況が一部である。同じ過ちを繰り返さないためにも多くの人に読んでもらいたい」と話した。

 沖縄愛楽園自治会は、県内各地の図書館や博物館など公共機関に感想文集を寄贈した。希望者には交流会館で無料配布する。同館は31日まで臨時休館で、6月2日から新型コロナの感染防止対策を実施して開館する。問い合わせは同館(電話)0980(52)8331。 (佐野真慈)