【記者解説】慰霊の日の式場変更 知事は「場所の意味」熟慮と発信を


この記事を書いた人 Avatar photo 嶋野 雅明

<解説>
 慰霊の日に開催する沖縄全戦没者追悼式について、玉城デニー知事は会場を国立沖縄戦没者墓苑から例年と同じ平和祈念公園内の広場に戻す方針を示した。県主催イベントのガイドラインに準じて200人以下の参加規模を検討する上で「国立戦没者墓苑では場所が狭すぎる」ために会場を戻すと説明したが、そもそも沖縄戦で亡くなった人々の慰霊と、平和を発信する際の「場所の持つ意味」について熟慮と議論が不十分だった印象は否めない。 

 玉城知事は、なぜ場所や規模を変更するかについて明確な説明はなかった。戦後75年の節目に当たり、開催手法やその意義付けも含めて考え方を示すことが求められる。

  当初、県は会場内の密集を避けるため、一般県民が多く訪れる広場ではなく墓苑へ会場を変更。26日には報道陣を交えた現場視察を終え、準備を進めていた。

 一方、沖縄戦研究者らは「国家の施設」での追悼式に「国家が引き起こした戦争に巻き込まれて肉親を亡くした県民の感情とは相いれないのではないだろうか」と懸念を示し、県の「平和の礎」に近い広場での開催を求めていた。

 玉城知事は琉球政府時代から県内の納骨所建設を国に求めた経緯を踏まえ「県の強い要望で国が建設したもので国立墓苑が適当だろうと決めた」と29日の会見で墓苑を選んだ理由を説明したが、結果的には場所を変更することになった。

 戦後75年の節目の今年、非戦と平和を世界や後世にどう発信していくか。新型コロナの影響でこれまでと違う環境に直面している中だからこそ、沖縄戦の継承の意義を再確認する必要がある。 (座波幸代)