沖縄県那覇市内の中学校で教員をしていた大城邦夫さんは、沖縄戦に動員された学徒の名簿を独自で収集し、公開してきた。身近に戦争体験者がいたことが沖縄戦に関心を持つきっかけになった。戦後75年、沖縄戦をどう伝えていけばいいのか、模索を続ける。
父親はやんばる、母親は九州への疎開を経験した。両親から戦争の苦労話をよく聞かされたという。海軍にいた祖父の軍隊生活や臼砲隊に所属し沖縄戦を生き抜いた伯父の話も聞いた。小さい頃から戦争の悲惨さを意識する機会が多かった。
大学生の頃、親戚にひめゆり学徒隊の生存者、宮城喜久子さんがいることを知り、元女子学徒隊有志でつくる「青春を語る会」に自主的に参加した。「私たちのことがあまり知られていない。伝えてほしい」と言われたことが、現在の資料収集につながった。
元学徒たちは戦前の学校生活を楽しそうに語る。教育現場では戦争の悲惨さだけでなく、部活動の写真や学校の配置図を見せるなどして、学徒隊になる前の学校生活を伝えるようにしていた。「今の生活と比較することで、戦争が奪ったものを考えてもらいたい。命の大切さを学んでほしい」
現在は教育の現場から離れているが、子どもたちに沖縄戦を伝えるため、資料の収集を続けている。その中で開南中学校の学徒隊名簿や、県がこれまで動員数を「不明」としてきた八重山中学校、八重山農学校の名簿を見つけた。「とにかく調べ続けることが大切。新しい発見をして子どもたちに伝えたい」。身近な所から命の大切さを伝える。