ウミガメの産卵場所でたき火? 卵は割れ、くぼみも… 自然公園指導員「涙が出そう」


この記事を書いた人 Avatar photo 琉球新報社

 【国頭】貴重なウミガメの産卵場所として知られているやんばる国立公園区域内の国頭村奥海岸で、15日早朝、アカウミガメ産卵巣の場所でたき火の形跡が見つかった。日本ウミガメ協議会会員で自然公園指導員の嘉陽宗幸さん(66)=国頭村桃原=が、ウミガメ調査中に見つけた。卵は割れ、くぼんだりしたものもあった。

取り出された卵には割れたものやくぼみが見られた=17日、国頭村奥海岸

 嘉陽さん自身が保護を施した産卵巣とは、明らかに現場の状況が違った。調査状況を記載した調査棒は抜き取られ放置されていた。巣の中心に設置してあった調査内容表示用のウキは半分以上が焼けただれ、燃やされた流木は黒炭になり周辺に散乱していた。

 奥海岸は、6月13日から14日にかけて、行楽客やキャンプ客でにぎわっていた。

 産卵巣の変わり果てた状況を目撃した嘉陽さんは「ウミガメ調査を始めて、19年がたち初めてのことで、涙が出そうになった」と話す。昨年と比較して、この時期の産卵が少ないと感じ危惧していた。

たき火跡そばの巣を確認する日本ウミガメ協議会会員で自然公園指導員の嘉陽宗幸さん

 同海岸では、今年に入り16カ所で産卵があった。被害の場所は10番目で5月30日に産卵があった場所。17日、午前6時30分ごろ、焚き火の熱による卵への影響や、人的被害も予想されることから、砂を掘って卵の状況を確認した。その結果、5個の卵が割れたり、くぼんだりする様子が見られた。嘉陽さんによると、今後無事にふ化することを願って、子ガメたちが大海原へ旅立つのを見守っていくしかないという。

 調査棒には、日本語で「ウミガメ調査」、英語で「Sea turtl’s nest(訳・産卵巣)」と記載しており、外国人でもウミガメが産卵した場所と理解できる。長年、保護活動調査を続けている中で海浜利用者と顔見知りとなり、声を掛ける人も多く、漂着ごみなどのごみ拾いを積極的に行っている行楽客もいるという。

 嘉陽さんは「9月ごろまで産卵が続く。夏場に向けてビーチでのキャンプも増えることが予想される。行楽客や海浜利用者には海浜に出入りする際に注意してほしい。ウミガメが無事に卵からふ化するよう大事に見守ってほしい」と話した。
 (新城高仁通信員)