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航空業界 苦闘の内幕、コロナ後の運航再開で火花


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ヒースロー空港は監督当局との対立の舞台に

By Benjamin Katz
2020 年 6 月 22 日 05:22 JST 更新プレビュー



 【ロンドン】世界の航空業界は運航再開への準備を進めている。だが、世界有数の規模を誇る英ヒースロー空港の現状は、各国政府がどのように海外への渡航再開を認めるか決定するまで、それがいかに困難であるかを如実に物語っている。

 新型コロナウイルスの感染者数が減少に向かっていることを受け、米国や欧州諸国の大半は、アジアに続いて経済活動の再開に踏み切っている。だが、小売業界などでは需要回復の兆しが見られるものの、航空需要はまだ、全面的な回復には程遠い。例えば、米ユナイテッド航空は、6月の売上高が前年同月比で約9割減になると見込む。

 航空会社や空港は、海外旅行がなお停滞している状況について、渡航禁止や隔離の義務づけなど、政府の制限措置が一因だと指摘している。豪カンタス航空は18日、10月末までほとんどの国際便を運休すると発表した。オーストラリア政府がコロナ封じ込めに向け、来年まで国際便の乗り入れの多くを認めない方針を示唆したためだ。

 ヒースロー空港のジョン・ホランドケイ最高経営責任者(CEO)は「今後5~10年では市場規模は今より大きくなる」としながらも、「そのスピードは、各国がどの程度迅速に国境封鎖を解除するかに左右される」と話す。

 ヒースロー空港は、国際便の発着数で欧州トップ、世界でもドバイに次いで第2位の地位を占める。ハブ空港であるヒースロー空港はここにきて、国際便発着の再開を巡り、政府、公衆衛生当局者と航空業界幹部の対立の舞台となっている。例えば、英国では入国者に対し、到着後2週間の厳格な隔離措置を義務づけている。航空各社やヒースロー空港は撤廃を求めているが、政府はこれまでのところ態度を変えていない。

 ホランドケイCEOは「ギリシャやイスラエル、イタリア、スペインなど、他国では国境封鎖を解除しつつあるのに、英国では見られない」と話す。英政府は、コロナ感染防止には、入国者の隔離措置が不可欠との立場だ。

 今月は、その試金石となりそうだ。欧州連合(EU)は15日から、域内の市民の移動再開を許可(一部はそれ以上の措置を含む)しており、多くは最低限の条件しかつけていない。運航再開には慎重な米航空会社も今夏、国内線を増やす方針を示している。アメリカン航空は7月の国内線の輸送能力が前年同月の水準の約55%と予想している。

 だが、同社の国際線の輸送能力は約20%にとどまる見通しだ。各国の渡航禁止令や隔離措置などが一様でないことに加え、渡航可能な搭乗者に関する政府方針が目まぐるしく変わっていることを反映している。

 独ルフトハンザ傘下の格安航空会社ユーロウイングスのイタリア領サルデーニャ島行き便は先月、空港再開の決定が覆されたことを離陸後に知らされたためドイツに戻る羽目になった。

 インターナショナル・コンソリデーテッド・エアラインズ・グループ(IAG)傘下のブリティッシュ・エアウェイズ(BA)は、7月の本格的な運航再開に向けてヒースロー空港を足がかりとする考えだった。だが、その計画は現在、保留となっている。IAGのウィリー・ウォルシュCEOが明らかにした。

 BAは先頃、アイルランドのライアンエア・ホールディングスや英イージージェットとともに、英政府の隔離義務づけ策を不服として、英高等法院に司法審査を求める申し立てを行った。

 ロンドン・スタンステッド空港に最大の拠点を構えるライアンエアのマイケル・オレアリーCEOは、英政府の措置は現実的ではないとの考えを示している。同社はまた、機内に持ち込む荷物を控えるよう求める英運輸省の指針も批判。「英政府は手荷物に関するばかばかしい助言を出すのをやめ、無駄な隔離義務づけ措置の撤廃に注力すべき」との声明を出した。英輸送省は、手荷物がなければ、機体への乗り降り時間を減らせるため、乗客同士の感染リスクを低減できるとしている。

 ヒースロー空港の利用客数は4月、20万6000人で底を打った。前年同月の700万近くからは急減となる。5月は22万8000人までやや回復したが、前年同月比ではなお97%近い落ち込みだ。

 ヒースロー空港を運営する民間企業ヒースロー・エアポート・ホールディングスはこのほど、セキュリティーや清掃、乗客アシスタントなど現場の最前線で働く従業員を対象に、希望退職の募集を開始すると発表した。同社はすでに幹部の3分の1を削減しており、CEOの3カ月の給与停止措置など、一部で減給も実施している。

 ヒースロー空港の利益は、航空チケットから得る手数料にほぼすべて依存している。そのため旅客数が減れば、収益を直撃する。通常なら、年間売上高30億ポンド(約4000億円)を稼ぎ出すが、現在ではコスト削減がなければ、毎月およそ2億5000万ポンドの赤字だという。

 免税店やバー、レストラン、書籍や電子機器を扱った小売店舗など、空港内の豪華なショッピングアーケードは閉鎖されたままだ。4つのターミナルのうち2つは閉鎖されており、現在では航空30社を利用可能なターミナルに集約している。2つある滑走路は1つしか使われておらず、3つ目のターミナル建設計画は棚上げとなった。

 ヒースロー空港のホランドケイCEOは、コロナ後時代における空の旅を世界共通のものにしようと、香港やシドニー、ロサンゼルスなど他の国際ハブ空港と協調していると話す。

 ヒースロー空港は目下、「ニューノーマル(新常態)」に対応している。航空貨物は通常、旅客機の下に積載されており、貨物専用機は1週間当たり7便程度だった。だが今では、病院向けの個人用保護具(PPE)や人工呼吸器などを載せた貨物専用機が100便も乗り入れている。搭乗客なしの航空機は、空港には最低限の収益しかもたらさない。

 ヒースロー空港は3月初旬、全面閉鎖も検討した。ターミナルを仮設医療施設として使用する選択肢もあったが、その後、それは不要と判断された。結局は閉鎖しないことを決めたが、それは閉鎖施設を維持する場合とコストがほとんど変わらなかったためだ。




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