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【社説】ボルトン回顧録、問われる公職者への配慮


社説

By The Editorial Board
2020 年 6 月 19 日 13:09 JST 更新プレビュー



 ジョン・ボルトン前大統領補佐官(国家安全保障担当)の回顧録出版に関しては、誰が一番の悪者なのか見極めるのが難しい。それは自身が仕えたドナルド・トランプ米大統領の任期中に回顧録を出したボルトン氏なのか、長年ボルトン氏と敵対してきたにもかかわらず今になって真実の語り部としてボルトン氏を称賛している人々なのか、それとも回顧録の中に描かれたトランプ大統領なのか。

 ボルトン氏は長い公職期間を通じて、ウォール・ストリート・ジャーナル(WSJ)に頻繁に投稿してくれた人物であり、米国の国益を守ってきた人物でもある。われわれが彼を擁護する側に立ったのは1度や2度ではない。トランプ氏の個人的言動に関するボルトン回顧録の記述は、正しいように思える。なぜなら、トランプ大統領が公の場でも似たような発言をしているからだ。われわれが知る限りでは、ボルトン氏がうそをついたことは一度もなかった。

 しかし、われわれは同時に、公職者の名誉への配慮はどうなったのか、疑問を感じざるを得ない。大統領は、補佐官らが秘密の暴露を控えることをいくらか期待してもいいはずだ。特に外国の指導者らとの個人的やりとりに関しては、そうであるべきだ。大統領に仕える側近らは、その大統領が退陣するまでは大統領個人に関する事柄について記述しないというのが、以前は慣例だった。

 昨今は、ホワイトハウスを去った途端、名声を得ようとする側近が多すぎる。ボルトン氏はトランプ氏が再選に挑んでいる最中にそれをしたことになる。トランプ氏によるボルトン氏の扱いは良くなかったが、大統領が良い扱いをする人は近親者以外ほとんどいない。ボルトン氏は職務を引き受けた際、どんな事態が想定されるか確実に分かっていたはずだ。

 たとえ、ボルトン氏の出版動機がトランプ氏の再選を阻むことだったとしても、ボルトン氏がマイク・ポンペオ国務長官の私的なコメントを公表して良いわけではない。ボルトン氏がしていることは、トランプ大統領に影響を与え、ひどい政策ミスを回避させるためのポンペオ氏の能力を削ぐことになる。ボルトン氏の近著は同氏の輝かしいキャリアに汚点を残すものであり、その内容は11月の選挙で誰が勝とうとも、国の助けにならないだろう。

 さらに悪いのは、何十年にもわたってボルトン氏が支持するあらゆることを攻撃してきたにもかかわらず、同氏の近著を聖書のように持ち上げている民主党とメディアだ。ジョー・バイデン前副大統領は、2005年にボルトン氏が国連大使に指名された際、議事妨害した民主党上院議員の1人だ。そこに党派的な悪意以外の理由はなかった。にもかかわらず、バイデン氏は17日、ただし書きをすることなく、ボルトン氏の見解を支持する声明を出した。

 トランプ氏に関しては、この本の抜粋からは驚きと言えるようなものは出てこない。記述の詳細は、大統領に期待される基準に反していて、気が滅入る内容だ。しかし有権者は、トランプ氏がほとんど気遣いができず、国際関係に無知で、行動規範を無視して自分の直感に基づいて行動し、ほぼすべての物事について「自分にとって都合が良いことかどうか」という判断基準で眺めていることを知っている。

 トランプ氏が再選のために政策を調整するという点は、他の大統領と大きな違いはない。2012年に当時のバラク・オバマ大統領が、イスラム国(IS)が戦闘員を動員しているにもかかわらず「戦争の潮流は後退している」と発言したことを思い出してほしい。とはいえ、トランプ氏が娘のイバンカ氏の問題から目をそらすために、ジャマル・カショギ氏殺害事件の後に米国とサウジアラビアとの関係を擁護する文章を書いたのは、さすがに恥ずべきことだ。そして、100万人のウイグル族住民を強制収容したことに対し、トランプ氏が中国の習近平国家主席に白紙委任の容認を与えたというボルトン氏の記述が正しいなら、それは不快感を催す。

 有権者は、トランプ氏にあと4年の大統領の地位を与えるかどうかを決める際に、過去3年半の間に学んだことに加え、こういった全ての出来事で判断を下すことができる。トランプ氏の性格的な問題と、これが2期目の政権にもたらす大きなリスクは、バイデン氏の活力が衰えつつあり、民主党の急進左派への傾斜が進んでいることとの比較で評価されることになるだろう。「民主主義は最悪の政治形態であるが、それは他の全ての政治形態を除外した場合のことだ」というウィンストン・チャーチルの言葉を思い起こすべきだろう。




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