国際
ウォール・ストリート・ジャーナル厳選記事

「黒人のウォール街」 100年前の虐殺から再起


国際

暴力的な過去と向き合い、地域再生を目指している

By Elizabeth Findell and Alejandro Lazo
2020 年 6 月 22 日 05:18 JST 更新プレビュー



ブラック・ウォール・ストリート・ギャラリーのオーナー、リッコ・ライト氏 PHOTO: SHANE BROWN FOR THE WALL STREET JOURNAL

 【タルサ】米南部オクラホマ州タルサの中心街からすぐ北に位置するグリーンウッド地区。ここにリッコ・ライト氏が営むアートギャラリーがある。店内には、地元の美術品や黒人解放運動家アンジェラ・デービス、映画監督スパイク・リー、作家トニ・モリスンの肖像画と並んで、「ブラック・ウォール・ストリート」と書かれたTシャツが展示され、レコードプレーヤーからはジャズが流れていた。

 100年前、グリーンウッドの黒人コミュニティーは活気にあふれていた。白人暴徒の焼き打ちに遭い、何百人もが殺害される前、「ブラック・ウォール・ストリート」として知られていたが、現在の姿からは想像もつかない。しかし、この地域は今、暴力的な過去と向き合い、様々な組織が新たな機会創出に取り組む中、地域再生を目指している。

 3月にグリーンウッドに移転したギャラリーのオーナーであるライト氏は「私が目指したのは単にアートと音楽、文化をここに集めることだ」と話す。「ブラック・ウォール・ストリートの先達(せんだち)や亡くなった人々、そして再建に努めようとここに残った人々に敬意を表するために、訪問者がやって来ている」

 タルサとそこで起こった暴力の歴史に全米の注目が向かい始めている。複数のアフリカ系米国人が警官の暴力で死亡したことを受け、司法制度の改革を求めて全米で抗議活動が巻き起こった。19日は奴隷解放宣言の記念日「ジューンティーンス」だった。

 1921年にグリーンウッドを破壊した黒人虐殺の詳細は長年、明かされないままだった。それから100年の節目が近づきつつある今、市はようやく、人種を巡る暴力という歴史の清算に乗り出している。州議員の超党派代表は「1921委員会」を結成。かつて存在したコミュニティーと、それを破壊した虐殺の記録を残す歴史センターを建設している。また、黒人アーティストや起業家への支援に加え、忌まわしい過去をどのように生徒に教えるべきか、教師に研修も施している。

 タルサ歴史協会によると、グリーンウッドはその昔、黒人のビジネス地区として栄え、第1次大戦後には裕福なアフリカ系米国人のコミュニティーとして全米に知られていた。だが1921年、ある黒人の若者がエレベーターで白人女性を襲った容疑をかけられた。その身柄を巡り、裁判所の前では群衆の衝突が発生した。

 これを受け、白人暴徒が35ブロックにわたる黒人地域を破壊し、最大300人を殺害したと歴史学者はみている。歴史協会によれば、事件は暴動として扱われたため、保険会社は破壊された建物に一切、保険金を支払う必要がなくなった。長年の間、タルサのほとんどの地元住民すら、何が起こったか全く知らなかった。

 「黒人コミュニティーの間では、こうした事件がまた起こるかもしれないという考えが常に心の底にあった。そのため彼らは事件について語らなかった」と、1921委員会のプロジェクト責任者フィル・アームストロング氏は話す。「そして白人コミュニティーは、あまりにも不名誉で、タルサの評判をおとしめるものであったことから、事件を認めようとしなかった」

 グリーンウッドの黒人ビジネスオーナーたちは事業を再建させたが、それもいっときのことだった。歴史家によると、1950年代から60年代にかけて、州をまたがる高速道路の建設やその他の「都市再開発」プロジェクトのため、政府による接収で多くが再び土地を失った。コミュニティーはさらに北へと移り、ビジネスは次第に消滅していった。

 アームストロング氏は1921委員会の主要目標について、新たに経済が活性化している地域で、黒人の住宅所有と事業所有を促進することだと述べた。「当時の人々は再建することができた」と同氏は語る。「素晴らしい話だ。まさにアメリカン・ストーリーだ。立ち直る力のストーリーだ」

 歴史センターの建設はすでに始まっている。委員会は来年、6月1日の虐殺からちょうど100年を迎えるイベントまでに完工させる予定だ。

 ベニタ・クーパー氏は学校の事務員を辞め、以前から好きだったスニーカーの販売を仕事にしようと決めた時、あらゆる所から支援があったと語る。タルサ経済開発法人のビジネス計画コースを受講し、低金利の融資を受けることができた。黒人起業家の輩出を支援するブラック・アップスタートで研修を受け、事業を売り込むコンテストで優勝し、起業資金として1万7500ドル(約190万円)を授与された。さらに、コンセプトに強く共感する不動産経営者と巡り会った。

 「まるでコミュニティー全体からあらゆる支援が来たかのようだった」とクーパーさんは言う。「市長が最初のお客だった」

 クーパー氏は昨年、グリーンウッドに「シルエット・スニーカーズ&アート」を開店した。わずか数カ月後、新型コロナウイルス対策のロックダウン(都市封鎖)で休業を余儀なくされたが、商売は順調だ。タルサ生まれではないが、地元の歴史を学ぶようになって多くの気づきがあったと話す。

 「ブラック・ウォール・ストリートは昔のような36ブロックに固まった黒人ビジネスにとどまらない」という。「黒人起業家たちはタルサの至る所でビジネスを築いている」




(c) 2020 Dow Jones & Company, Inc. All Rights Reserved Worldwide.


■ウォール・ストリート・ジャーナル(WSJ)について
琉球新報デジタルサービスWSJ特設ページ-琉球新報WebNews購読会員なら追加料金なしに米最大の日刊経済紙ウォール・ストリート・ジャーナル(WSJ)オンラインが購読できます

 



関連するニュース







  • お知らせ


  • 琉球新報デジタルサービス



  • 会員制サービス






  • 他のサービス