密を回避、こまめに換気 重症リスクある高齢者守る 福祉施設で対策・警戒続く


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感染予防のため、食事前に手指の消毒をするデイサービスの利用者=6月29日、那覇市

 新型コロナウイルスに感染すると重症化するリスクが高い高齢者が集まる県内の施設では、感染症対策を強化する新しい取り組みを始めている。介護の現場は身体的な接触が多く3密(密閉、密集、密接)の回避が難しい。新型コロナ感染の第2波に備え、非常事態宣言解除後も施設は警戒と試行錯誤を続ける。

 6月下旬、那覇市内にある特別養護老人ホーム「つじまち」。明るい日差しが差し込む室内にデイサービス(通所介護)を利用する高齢者の柔らかく優しい歌声が響く。曲は県内で長い間歌われる民謡「赤田首里御内(あかたすんどぅんち)」。約20人の利用者が帰宅前のカラオケを楽しんでいた。

 施設では、デイサービス利用者への検温を到着後だけではなく、送迎車への乗車前にも行うようにした。最も3密になりやすい車内は、クーラーをかけた状態で常に窓を開けているという。これまで行っていなかった庭でのレクリエーションも、暑さや熱中症への対策を取って週2、3回の頻度で実施している。

 食事の際は、できるだけ対面を避けて利用者を座らせ、1メートル以上離すようにしている。小まめな換気や、入浴時などの衛生管理も徹底する。介護職員による高齢者へのボディータッチも控えるようになった。

 生活相談員の諸見里愛さん(40)は「耳が悪く近寄って話し掛ける必要がある利用者には、対面ではなく相手と反対方向に向き横に並んで話し掛けている」と語り、細心の注意を払う。諸見里さんによると、以前はマスク着用や手指の消毒を嫌がる利用者もいたが、今は積極的にするようになったという。

 敷地内には特別養護老人ホーム(特養)もあり、入所施設へのウイルス侵入を避ける「水際対策」も強化する。デイサービス利用者は施設がある1階以外のフロアには行くことができない。職員に対しても担当するフロア以外への移動を禁止した。委託業者からの物品受け渡しは玄関など限られた場所で行い、立ち入りの場合は検温を行う。

 家族などの面会は3月下旬から6月まで全面的に禁止し、1階に設置されてるパソコンを使ったオンライン面会で対応してきた。7月からは人数を制限し、県外の渡航歴がないかなどの同意書の提出など条件付きで面会を許可している。中真靖施設長は「施設の設備や人員などによってできることは違ってくる。感染者を出さないよう、今はできる限り密を回避する工夫をするしかない」と話した。 (問山栄恵)