【記者解説】基地負担減、伊江島で逆行 人口減少地域をたらい回し


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 米軍が伊江島補助飛行場の滑走路などを改修したのは、パラシュート降下訓練などの軍事演習を集中的、安定的に実施できるようにするためだ。海兵隊は、中国をにらんで採用した新たな戦略の訓練をする場として伊江島を位置付ける。パラシュート降下を含む離島奪還訓練が激化し、事故や騒音被害など地元の負担が増す恐れがある。

 飛行場は畑など民間地に隣接しており、フェンス外や提供施設区域外に物資の落下や兵士が降下する事故を繰り返している。車両などの重量物を投下する訓練もあり、危険度が高い。

 1996年にSACO(日米特別行動委員会)最終報告で、読谷村で実施されていた降下訓練が伊江島に移転された。米軍が嘉手納基地などで降下訓練を実施すると、日本政府は「伊江島でやってもらうよう働きかける」との姿勢を示す。

 SACOは目的の一つに「県民の負担軽減」を掲げているが、伊江島はそれに逆行し、米軍の降下訓練が集約されてきた。普天間飛行場の名護市辺野古への移設と同様に、沖縄の米軍基地負担を県内の人口の少ない地域にたらい回しする構造になっている。

 伊江島をはじめ北部の米軍基地で訓練が激化している中で、今回の改修工事で滑走路の安定的運用が可能となり、伊江島での降下訓練実施が一層固定化されかねない。

(塚崎昇平)