透析患者「治療難民、生きられない」 コロナで3密回避困難


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 新型コロナウイルスの感染拡大を受け、慢性腎臓病などで人工透析が必要な患者が危機感を募らせている。医療機関の透析室は多人数用の透析装置を複数人が同時に利用することがあり、3密回避に苦慮する。感染者が出るとクラスター(感染者集団)化するリスクが高く、県透析医会など5団体は県に対策を求めている。医療提供体制も厳しい状況が続く中、要請に加わった県腎臓病協議会の國吉實会長は「透析をしないと生きられない。今の状況では透析難民になりかねない」と訴える。

新型コロナウイルス対策でビニールシートが張られた人工透析室=25日、那覇市繁多川の首里城下町クリニック第二(提供)

 「一つの空間に並んだベッドの上で器械につながれた治療が必要であり、まさに密閉、密集、密接した状態といえます。ひとたび感染が起こると一挙に広がり、重症化し、クラスター化する高リスク治療です」。5団体連名で13日に県へ提出した要請文書にはこう盛り込まれた。

 透析患者は高齢者が多く、高血圧や糖尿病、心臓病など多くの合併症を有する場合があり、新型コロナで重症化する因子を抱える。免疫機能の低下も指摘される中、医療機関に週3回通い、1回当たり4~5時間の透析は欠かすことができない。ただ、県内では医療機関での感染が相次いでおり、國吉会長は「院内感染を一番恐れている」と気をもむ。

 現在、県内の人工透析患者数は約4500人。各透析施設では複数回の検温や間仕切りの設置といった対策を講じており、クラスターなどは発生していない。一方、家族感染など散発的に4人が新型コロナに感染したことが確認されている。7月以降は2人で、うち1人は重症だという。

 人工透析を受ける患者が新型コロナに感染した場合、透析医療は欠かせず、原則として入院病床の確保が求められる。濃厚接触者の場合でも同様で自宅隔離することも難しいという。

透析患者への対策を県に訴えた県腎臓病協議会の國吉實会長

 首里城下町クリニック第二院長で県透析医会の比嘉啓会長は「1人でも感染者が出ると緊張感が大きい」と指摘する。こうした状況から、5団体は透析施設を通じたクラスターや感染拡大を防ぐため、感染が疑われる透析患者や医療従事者の迅速なPCR検査の実施、個人用の透析機器の購入支援などを県に求めた。

 県内の新型コロナの新規感染者は減少傾向にあるが、医療提供体制は厳しい状態が続く。院内感染などの発生で診療を休止する医療機関も出ている。「透析難民」の懸念が現実味を帯びる中、國吉会長は「マスクをしていない人を見るとおじけづいてしまう。見た目では分からないが、リスクを抱えている人がいることを知ってほしい」と切に願った。

(仲村良太)