台湾の観光、支えるのは地元客 「振興三倍券」で旅行促進 域内感染ゼロ


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花火大会に向かう台湾市民ら=8月29日、台湾・台北市内(游重器さん提供)

 新型コロナウイルスの感染拡大の封じ込めに成功した台湾は4月以降、域内の新規感染者数をゼロに抑え込み、休業などによる経済活動への影響も最低限に抑制した。台湾当局は海外客の入域を認めず、マスク着用などの感染対策を徹底した上で、域内需要や国民の外出消費を奨励した。現在、台湾の観光地は地元客が消費を支えている。

 台湾の北部が拠点のツアーガイド、游重器(ヨウゾンチー)さん(40)は昨年まで海外客を中心に観光案内をしてきたが、今年から全て国内客に変わった。游さんによると、海外客とは訪れる観光スポットが異なるという。「台湾人の好みは澎湖(ボンフー)などの離島で、海外客があまり訪れない観光スポットとして人気だ」と説明した。

 世界で多くの国がロックダウン(都市封鎖)を実施していた5月ごろ、台湾では外出制限がなく、経済活動も通常通りだった。当局は内需を喚起しようと、7月に個人負担1千台湾元(約3600円)で3倍の3千元(約1万円)分の消費ができる「振興三倍券」を発行し、国内旅行の需要を押し上げた。

 游さんは「国内での移動は自由なので、みんな楽しく観光している。海外のロックダウンを見ると、台湾では自由に移動できることがすごく不思議に感じる」と述べる。一方で観光案内の需要は減少し「収入は以前と比べて半減した」と明かした。

 新型コロナが感染拡大する前、台湾人は海外旅行も盛んに行った。沖縄は長年、人気の観光スポットだ。台北駐日経済文化代表処那覇分処の范振國処長は「台湾人は観光することが大好きな国民性がある。沖縄で新型コロナの第2波がなければ、大勢の台湾客の来沖も見込まれただろう」と推測する。

 新型コロナが収束した後、沖縄観光ブームが再燃することも示唆した。「まず感染防止対策を優先し、感染拡大を抑えないといけない。万全な防止対策があれば、(沖縄に)観光客も戻って来るだろう」と提言した。
 (呉俐君)