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コロナワクチン開発最前線 実用化はいつ?


ヘルス

約170カ国でワクチン開発が進められている

By Ana Rivas, Peter Loftus and Alberto Cervantes
2020 年 9 月 8 日 10:38 JST 更新プレビュー



 世界保健機関(WHO)によると、現在約170カ国で新型コロナウイルスに対するワクチン開発が進められている。すでに臨床試験(治験)の最終段階に入ったか、近づきつつあるワクチンも数種類ある。結果次第では、早ければ年内にもワクチンが承認される可能性があると製薬各社は話す。

先行する有力候補は

 第3相試験(フェーズ3)を始めた有力候補には、オックスフォード大学と英製薬大手アストラゼネカがタッグを組んだものや、米製薬大手ファイザーが独バイオ医薬ベンチャーのバイオンテックと共同開発するもの、米バイオテクノロジー新興企業モデルナが治験を進めるものがある。

 中国医薬集団(シノファーム)では2種類のワクチンがフェーズ3に入った。もう1つの中国企業、康希諾生物(カンシノ・バイオロジクス)は間もなく最終的な治験を始める。

 最終段階で安全性や保護の永続性を確認するには数カ月あるいは数年かかる場合もある。だが、フェーズ3で前向きな中間結果が出れば、量産化または供給開始に向けて規制当局の承認を得るプロセスを始められる。今秋、複数の有力候補の中間結果が出ると予想される。

オックスフォード大学/アストラゼネカ ワクチン候補:Ad26COVS1
 オックスフォード大学/アストラゼネカのワクチンは、新型コロナウイルスが侵入する際、細胞の受容体と結合するのに用いる突起状のスパイクタンパク質をコードする遺伝的情報を伝えるものだ。これによって細胞はスパイクタンパク質を生成し、免疫反応を引き起こすことでコロナウイルスを撃退する。こうした遺伝情報を運ぶ役目を担うのは、チンパンジーの風邪ウイルスを弱毒化し、無害にしたものだ。

 初期段階の治験で、このワクチンはヒトの体内で免疫反応を引き起こすことに成功し、ごく軽い副作用しかみられなかった。フェーズ3試験は米国の3万人の被験者を対象に8月に開始された。英国、ブラジル、南アフリカで数千人のボランティアを対象にした最終段階の治験も実施されている。

・予想される生産能力:アストラゼネカは20億回分を世界に供給することを目指す。10億回分は年内に提供できる可能性があるとしている。

モデルナ/米国立アレルギー感染症研究所(NIAID) ワクチン候補:mRNA-1273
 モデルナのワクチンも、遺伝子ベースの技術を用いて免疫反応を引き起こす。ただし、遺伝子コードを伝えるのはメッセンジャーRNA(mRNA)だ。ワクチンが体内の細胞までmRNAを運び、そこでコロナウイルスのスパイクタンパク質が生成される。

 モデルナと米国立アレルギー感染症研究所(NIAID)は2回投与による治験を実施。米国初のヒトを対象にした治験となった。初期段階の治験でこのワクチンは免疫反応を引き起こすことに成功。副作用は軽く、忍容性(副作用を被験者が耐えうる程度)はおおむね良好だった。

 最終段階の治験(米国で被験者3万人)が進行中。秋に中間結果が出る可能性がある。mRNAワクチンはまだいかなる疾患に対しても承認された例がない。

・予想される生産能力:2021年から年間5億~10億回分。

ファイザー/バイオンテック ワクチン候補:mRNA, BNT162b2
 ファイザー/バイオンテックが開発中のワクチンもmRNAを用いる。第1相試験(フェーズ1)では、中和抗体を生み出し、忍容性はおおむね良好だった。中和抗体はコロナウイルスを撃退する効果が期待される。フェーズ3(米国で3万人対象)が7月に開始された。米国外約120カ所でも実施する予定。

 米政府はファイザー/バイオンテックから1億回分の供給を受けることで合意。20億ドル(約2100億円)近く支払うことになっている。ファイザーは規制当局の承認もしくは緊急使用許可(EUA)を10月に求める予定。

・予想される生産能力:2020年末までに世界で最大1億回分。2021年末までに約13億回分。

中国医薬集団(シノファーム) 北京生物製品研究所, 武漢生物製品研究所
 中国国有企業、中国医薬集団(シノファーム)は、政府機関の北京生物製品研究所および武漢生物製品研究所と共同で2種類のワクチンを開発している。いずれも従来のワクチン作製技法に沿ったものだ。

 同グループはパキスタン、アラブ首長国連邦(UAE)など数カ国と治験を実施することで合意した。一方、武漢生物製品研究所を巡っては子供に投与するワクチンなどについて安全上の懸念が生じている。

 中国政府は一部のコロナワクチンについて、7月下旬から医療従事者や国境検問所職員などに「緊急投与」し始めたと話す。中国当局者は年内に一般市民がワクチンを接種できるようにする考えを示した。

・予想される生産能力:年間約2億2000万回分。

科興控股生物技術(シノバック) ワクチン候補:CoronaVac
 中国民間企業の科興控股生物技術(シノバック・バイオテック)は、感染率が比較的高いブラジルのサンパウロで7月に最終段階の治験を開始。また中国国営メディアによると、同社はインドネシアの国有製薬持ち株会社PTバイオファーマとインドネシア国民向けに最大で年間2億5000万回分のワクチンを製造する契約を結んだ。

・予想される生産能力:北京工場において年間約3億回分。

康希諾生物(カンシノ・バイオロジクス)/中国軍事科学院軍事医学研究院 ワクチン候補:Ad5-nCoV
 カンシノのワクチンは最初に人民解放軍の内部で接種される予定。同社は軍の研究所と協力し、弱毒化した風邪ウイルスを用いたワクチンを開発してきた。フェーズ1試験は3月、初期のコロナ感染症の中心地・武漢で実施された。6月にワクチンが政府に承認され、軍で1年間の使用許可が下りた。

・予想される生産能力:2021年から年間1億~2億回分。

ジョンソン・エンド・ジョンソン(J&J) ワクチン候補:Ad26.COV2.S
 ジョンソン・エンド・ジョンソン(J&J)は、風邪の原因となるウイルスの1つ、アデノウイルスを弱毒化したものを用いたワクチンを開発中。初期の動物実験では、ワクチンを1回投与すると強い免疫反応が引き起こされた。9月下旬には世界で6万人を対象とする後期臨床試験を開始する計画だ。感染率の高い米国内の約180カ所と他の8カ国(ブラジル、チリ、南アフリカなど)で実施するとしている。

・予想される生産能力:2021年末までに世界で10億回分。うち米国向けは1億回分(2億回分を上積みする場合も)、英国向けは3000万回分(最大2200万回分を追加購入の場合も)。

国立ガマレヤ研究所(ロシア​) ワクチン候補:Gam-COVID-Vac
 ロシアの国立ガマレヤ研究所は、2種類のアデノウイルスを組み合わせたワクチンを開発中。すでにボランティアを対象に治験を始めた。ロシアは8月上旬、最終段階の治験を終える前に実質的にワクチンの使用を承認した。政府は10月には大規模なワクチン接種を開始し、まずは医療従事者などハイリスクグループを優先する考えだ。

・予想される生産能力:年間5億回分。2020年9月から量産体制に入る。

ノババックス ワクチン候補:NVX-CoV2373
 米バイオ医薬ベンチャー、ノババックスが開発中のワクチンは21日間隔で2回投与する。新型コロナウイルスのスパイクにそっくりのタンパク質を投与し、抗体や免疫細胞を生成することでコロナを撃退させる。

 ワクチンには免疫反応を加速させる補助剤(アジュバント)の成分も含まれる。フェーズ1試験ではワクチンの忍容性はおおむね良好で、抗体の生成数も期待できるレベルだった。8月にフェーズ2が始まり、同社の話では9月にフェーズ3を開始できる可能性がある。

・予想される生産能力:米国使用分として1億回分。年内に出荷開始の予定。外国向けにも製造する計画だ。




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