台風10号、なぜ「特別警報級」に発達しなかった? 海面水温の低下要因か 台風8、9号の影響


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(左)沖縄の東の海域で平年より海面水温が高い値を示す2日の海面水温解析図 (右)東シナ海側で平年より低い海面水温の値を示す5日の海面水温解析図(気象庁ホームページより)

 「特別警報級」に発達し、重大な災害が発生する恐れがあった台風10号は予想された勢力にはならなかった。沖縄気象台によると、直前に接近した台風9号や8号の影響で海面水温が下がったことなどが背景にあるとみられる。

 気象台は3日時点で、台風10号は中心気圧915ヘクトパスカルまで発達すると予報。その時点で沖縄近海は記録的に高い海面水温により、台風が発達しやすい状態とみられていた。
 特別警報級に発達しなかった理由について、気象台は(1)台風8、9号が海水をかき混ぜたことで海面水温が予想より低かった(2)上空の乾燥した空気を取り込んだ―ことが可能性としてあるという。気象庁の沖縄周辺の海面水温のデータを比較すると、2日は平年より高い数値を示したが、台風接近時の5日には平年より低くなっていた。これらにより台風を発達させる水蒸気が予想より取り込まれなかったとみられる。今後の詳細調査で判明するという。
 今回と同様に台風が立て続けに接近した場合、予想より発達しなかった事例は過去にもあった。琉球大の伊藤耕介准教授(気象学)は2018年の台風25号について、沖縄の南東部で900ヘクトパスカルに達したが「24号が海面水温・海洋表層水温を冷やした海域にさしかかると急激に勢力を落とした」と指摘した。
 当時も1週間で台風が立て続けに接近しており、一時的に海面水温を下げる効果があったとみられる。だが、伊藤准教授は台風による海面水温低下の効果は「せいぜい2~3週間程度」とみており、その後は通常の水温に戻るという。9月中も海面水温は高い状況にあり、今後も台風の発生、発達に注意が必要だ。