<識者の目・辺野古変更申請>武田真一郎氏 国、身内手続き使えず 工事頓挫の可能性も


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 名護市辺野古埋め立ての設計概要変更手続きが始まった。大浦湾には水面下90メートルに達する軟弱地盤の存在が判明し、前例がない大規模な地盤改良工事をする必要があるという。護岸で囲まずに海底に盛り土を行う計画も盛り込まれた。

 環境と建設費の両面で新基地建設が合理性を欠くことは決定的となり、反対意見が7割を超えた県民投票の結果を踏まえれば、知事が変更を許可することはあり得ないだろう。国と県の間では法的争訟の応酬が続いているが、知事が変更を不許可とした場合、どのような展開となるだろうか。

 国(防衛局)は埋め立て承認の取り消し・撤回に対しては、行政不服審査法に基づいて国土交通相に審査請求を行い、国交相は取り消し・撤回を取り消した。

 いわば身内の判断で知事の取り消し・撤回を取り消すことは極めて不公正であるが、今度はこの手は使えない。承認取り消し・撤回を取り消せば埋め立て承認の効果が復活して工事を継続することができるが、変更不許可処分を取り消しても許可がなされたことにはならず、国は設計を変更して工事を継続することはできないからである。

 そこで、国交相は地方自治法に基づき、許可をすべきであるとする是正の指示を行うはずである。この是正の指示に対して県が取り得る手段として、国地方係争処理委員会への審査の申し出と是正の指示の取り消し訴訟が用意されている。

 設計概要の変更を許可するかどうかの裁量権は知事にあり、知事の不許可処分が著しく不合理で裁量権の逸脱乱用があると言えない限りは、国交相の是正の指示は違法となると解される。

 この点は先例のない新しい論点である。従って知事は、本件設計変更は公有水面埋立法が定める国土の適正利用要件および環境・防災要件に違反して違法であること、よって不許可処分は違法ではなく、むしろ是正の指示が違法であることを、審査の申し出の段階から徹底的に主張すべきだ。今度は玉城知事の側に裁量権があるので、裁判所も不許可処分が違法とは言えず、工事が頓挫する可能性は少なくないだろう。 (行政法)