【記者解説】財政力弱い自治体 過疎新法で指定外れるのはなぜ?


この記事を書いた人 Avatar photo 琉球新報社

 2021年度からの新たな過疎法で県内自治体の半数以上が過疎地域指定から外れる見通しとなっているのは、新法を審議する与党・自民党が指定要件の一つとして「人口減少」の起点変更を検討しているからだ。

 従来の過疎法は1960年を基準年に設定して人口減少率を算定してきたが、新法では75年か80年を基軸に基準年の変更を検討している。基準を変更した場合、県内の過疎自治体は、人口減少率が改善しているため人口減少の指定要件を満たさなくなる市町村が数多くある。ただし、もう一つの指定要件である財政力の基準(0・5)を上回る市町村は一つもないため指定要件を満たしている。

 過疎法が施行された70年から2015年までに県内人口は48万8455人増えた。一方、過疎18市町村に限ると同期間に2万9346人減った。要件の一つ、財政力指数の全国自治体平均ポイントは0・51だが、県平均は0・38、過疎18市町村では0・17だった。ポイントが高いほど財政力が健全と評価される。

 県内過疎自治体の人口減少率は鈍化していても財政力は依然として弱い。特に離島市町村は他の自治体と陸続きではないため、医療サービスを含めて一定程度は自己完結する必要があり、指定から外される影響は大きく、住民サービスの低下につながりかねない。

 また沖縄は米国施政下にあったため、法の適用が全国自治体より10年遅れた特殊事情も抱えている。ただ沖縄の特殊事情に対応する沖縄振興特別措置法と違い、過疎法は全国法なので、これらの事情が勘案されるか不透明だ。

 住民サービスの低下に至ると、ますます過疎化が進む。県は22年度から施行を目指す新たな沖振法で、過疎法の恩恵が受けられなくなった市町村を救済する制度設計も検討する必要がある。
 (梅田正覚)