タイムス元社員逮捕で識者「信頼に傷、検証を」「税務当局審査で防げた可能性」


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 新型コロナウイルス経済対策の持続化給付金100万円をだまし取ったとして、沖縄タイムス元社員の男(45)=那覇市=が詐欺容疑で逮捕された。識者に報道機関の在り方や不正受給が起きた背景を聞いた。


不正見抜きにくい制度 田島泰彦さん(元上智大教授)

 沖縄で初摘発のみならず、メディア関係者ではおそらく全国初ではないか。こういう事態を踏まえ、タイムス社は何をしなければいけないのか。記事や取材で少し誤ったというレベルではなく、犯罪的な行為そのものに関わっている意味をもう少し本気になって考える必要がある。本質的な不信感を招いており、懲戒解雇にしてサヨナラというのはよろしくない。

 琉球新報と沖縄タイムスが沖縄社会で大きな影響力を持っているのは、不正を掘り起こし、国のやり方へのまっとうな批判を粘り強く続け、深い信頼を勝ち得てきたからだ。メディアを快く思わない人たちは今回の件を「そらみたことか」と考えるわけで、今回の事件が、沖縄のメディアが果たしてきた重要な役割、信頼にかなり傷がつくインパクトを与えた意味をよく考え、検証を進めることが大事だ。

 (メディア法)


懲戒解雇では終わらない 奥窪優木さん(フリーライター)

 持続化給付金は不正を見抜きにくい体制になっている。学生の不正受給が多いが、扶養に入っている人は対象外にするか、審査を厳しくすれば、ここまでやりたい放題されなかった。海外でも持続化給付金に似た制度があるが、税務当局が仕切っている。日本では下請けの専門知識がない人たちが審査している。緊急事態なので迅速に進める必要はあるが、税務当局が審査に関われば、不正を見抜くことができたのではないか。

 組織的な不正受給は、反社会的勢力がお金もうけに興味のある人から手数料を取り、不正受給させる例が多い。国は不正受給した人々に自主返還を呼び掛けているが、手数料を取られ、全額返還すると持ち出しになるから自首しにくいという人も多いと思う。組織をつぶす意味ではそそのかされた人たちの立場を考え、ある分だけの返金とする方法もありかと思う。