性的撮影、沖縄県内でも問題視 スポーツ協会 安心な競技環境整備訴え


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今季最後の全県的な記録会となった秋季記録会。選手の親族や指導者らが客席から見守った=23日、沖縄市のタピック県総ひやごんスタジアム

 アスリートの性的な撮影被害や会員制交流サイト(SNS)への悪質な画像拡散の問題に対し、国内のスポーツ界が対策に動き出している。撮影した写真を加工して性的な意図で流すなど、競技者を傷つける深刻な被害が競泳や体操などさまざまな競技で出ている。特に陸上は敷地の広い屋外開催が主で規制がより難しいため、撮影被害が多く、長年にわたって問題視されてきた。23日に行われた今季最後の県内での陸上競技会、秋季記録会の会場で選手や協会関係者に聞くと、罰則を定める法整備などを求める声が上がった。(長嶺真輝)

 ■声掛けで抑止

 沖縄陸上競技協会では、県内開催となった2010年の美ら島総体と19年の南部九州総体の際に全国高体連から対策の研修を受けた。客席では家族や指導者らが撮影をしているが、体の一部分をアップできるような望遠レンズを無許可で使用している人には「マーシャル」と呼ばれる見回り担当者が声を掛けて申請の有無を確認するなどして抑止を図っているという。

日本オリンピック委員会(JOC)や日本スポーツ協会など7団体が作成した啓発用チラシ

 比嘉律子副会長兼専務理事は「全国総体では高校生の被害が多いということで研修があった。後ろめたい人は声掛けに激高することもある。優しい言葉で声掛けすることを徹底するなど、トラブルを避けながら実施することで、対策になっていると思う」と話す。

 今月18日には日本スポーツ協会から県スポーツ協会に「性的ハラスメント防止の取り組みについて」と題した協力依頼や啓発用のチラシが届き、県スポーツ協会は25日に沖縄陸協を含めた加盟71団体にメールで情報共有を行った。陸協の比嘉専務理事はインターネットの普及で被害が後を絶たないため「対策を粘り強く続けていくしかない」と今後を見据える。

 選手と直接関わる指導者も対応を模索している。普天間高陸上部の伊波絹子監督は「生徒の方が普段からSNSを頻繁に利用するので『変な動画や画像を見付けたら教えて』と伝えている」と言い、投稿者に削除を求めることもあるという。一方、表彰式などでは上着を着るように求めているが、ユニホームに対する憧れがある選手も多く「あまり肌を見せないようにと守りたい私たちと、生徒の感覚に少し差があることもある」と悩みも吐露した。

 ■動画に不快感

 「自分も動画サイトにそういう動画をアップされたことがある。明らかに競技目的じゃない撮影をされていて、気持ちの悪い(性的な)コメントも多かった」。女子走り高跳びの第一線で活躍する徳本鈴奈(24)=友睦物流=が、顔をしかめた。

 動画を投稿されたのは福岡大在学中で、当時は競技仲間にも同様な被害があったという。日々心身を磨いて生み出すフィールドでの成果をゆがんだ目的で消費されることに憤りは強く、国内で対策の動きが始まっていることに対して「歓迎したい」と前向きに受け止める。一方で「法律をつくったら減るのかな…」と規制の難しさも感じている様子だった。

 関係者によると、保護者の中には「ぴったりとしたユニホームを着るのもおかしいのでは」という声もあるが、試合着を見直すというのは短絡的な対策だという指摘も。沖縄陸上をけん引するアスリート工房代表の譜久里武(49)も同様に反論する。

「選手は100分の1秒、1ミリの速さ、高さ、距離を競って日々努力している。ユニホームも空気抵抗を減らすために長年研究されたものだ」と強調。指導者の立場から「被害は何十年も前からあるが、法整備などでルール化してほしい」と選手が安心して競技に臨める環境の整備を訴えた。