<深掘り>新垣氏の衆院選に懸念の声 北中城村長選で後継・天久氏敗北 村職労は比嘉氏支持


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村長選挙で当選確実となり、支援者と共に喜ぶ比嘉孝則氏(前列中央)=6日、北中城村喜舎場公民館

 任期満了に伴う6日投開票の北中城村長選は、無所属新人で元村企画振興課長の比嘉孝則氏(66)が新垣邦男村長の後継候補だった前村議の天久朝誠氏(38)を破り初当選した。新垣氏が社民党の照屋寛徳衆院議員=沖縄2区=の後継として次期衆院選に向けた態勢づくりを急ピッチで進める中、足元での敗北に求心力の低下を懸念する声も漏れる。ただ当事者である新垣村長自身は「(敗戦は)天久氏の若さが受け入れられなかっただけだ。衆院選とは別ものだ」と述べるほか、県政与党内からは「比嘉氏勝利の方がしこりなく衆院選では一致して臨める」と楽観視する向きも多い。

 ■推薦ゼロ

 今回の北中城村長選は8月の今帰仁村長選、9月の西原町長選と打って変わって県内全ての政党がどの候補者にも推薦を出さない「地元で完結した選挙」(県政与党関係者)だった。比嘉、天久両陣営はどの政党にも推薦願を出さず、玉城デニー知事や政党幹部らが党の代表として応援演説に入ることもなかった。与党幹部によると、議員同士の人間関係で与党内でも支持は割れたという。同幹部は「『オール沖縄』勢力が片方の候補者に肩入れした事実はない」と語った。

 新垣村政の評価が最大争点となった今選挙で、比嘉氏は行財政の再建などを公約の柱に掲げ、天久氏は生活福祉の向上を柱に据えた。今回2度目の村長選挑戦となる比嘉氏は前回と同様、村職労の推薦を受け、新垣村政への刷新を強く主張した一方、天久氏は新垣氏の後継であることを前面に押し出す選挙戦を展開した。ただ両候補とも「無所属の革新系候補」で選挙戦は革新分裂選挙の様相を呈した。

 村職労の比嘉氏支持について村関係者は「推察の域を超えないが」と前置きした上で「(新垣村長は)村職労の思想と異なる保守系議員の応援に回ることなどもあった。また、外部からいきなり人材を登用することもあり、村職労の心が少しずつ離れたのではないか」と語った。

 ■異なる見方

 県政与党内では、玉城知事を支える「オール沖縄」勢力と政府与党が全面対決する衆院選への影響については限定的とみる向きが強い。与党関係者の一人は「天久氏が勝利した場合は、比嘉氏を支援した自治労が衆院選で新垣氏を支援しない可能性もあった。今回の結果はベターだった」と指摘する。

 一方、県政与党の考えとは異なり、村議の一人は「自身の地盤で応援者が敗退したことは衆院選に影響は少なからずある」と話す。村長選の当選から一夜明けた7日、比嘉氏は新垣氏の衆院選出馬について「(応援するかは)後援会と相談して決めたい」と述べるにとどめた。

(吉田健一、新垣若菜)