〈60〉急性・慢性扁桃炎 扁桃炎から全身疾患へ


この記事を書いた人 Avatar photo 琉球新報社

 扁桃(へんとう)とは、のどちんこの両側にあるクルミ大の膨らみです。扁桃全体がリンパ組織でできており、細菌やウイルスが侵入すると最初に生体防御反応が起こる場所です。

 普段はピンク色ですが、炎症を起こすと真っ赤になり、レンサ球菌(溶連菌を含む)などに感染すると白い膿栓(のうせん)が出現します。この膿栓は徐々に癒合して大きくなり、38度以上の発熱、咽頭痛や嚥下(えんげ)痛を引き起こし、感染が頸部(けいぶ)リンパ節まで広がると頸部痛も強くなります。これが「急性扁桃炎」の状態です。同じ炎症を年に4、5回以上繰り返すと「慢性扁桃炎」もしくは「習慣性扁桃炎」と呼ばれます。

 急性扁桃炎は抗生剤や鎮痛剤の内服、うがい薬などで治療し、多くの場合は約1週間で回復します。膿栓の大きい中等度の症例では点滴治療が必要です。さらに扁桃周囲に膿瘍(のうよう)を形成する重度の「扁桃周囲膿瘍」では、局所麻酔下で膿瘍を切開排膿します。場合によっては入院が必要となります。

 慢性扁桃炎になると扁桃自体の炎症は軽度ですが、遠く離れた組織に合併症が起こることがあります。これは「扁桃病巣疾患」と呼ばれ、扁桃の炎症を原因とする異常な免疫反応によって起こります。重篤な合併症は「IgA腎症」で、急性腎炎から慢性腎炎へと移行し、最悪の場合は人工透析が必要となります。早期の診断と治療が重要です。他に、手足に多数の小膿疱(しょうのうほう)ができる「掌蹠膿疱症(しょうせきのうほうしょう)」や多発関節炎や心臓障害を特徴とする「リウマチ熱」の原因にもなります。

 これらの病気を合併した場合、あるいは合併予防のためには「扁桃摘出術」が必要となります。全身麻酔下の手術で、約1週間の入院が必要です。手術の必要性は外来の血液検査でも判定できます。ASO(抗ストレプトリジンO)抗体価を測定し、異常高値の場合は手術的治療が勧められます。扁桃炎を繰り返す方は、ぜひ近くの耳鼻咽喉科医にご相談ください。

(辺土名仁、みどり耳鼻咽喉科 耳鼻咽喉科)