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【オピニオン】中国が強めるキリスト教弾圧 【WSJ厳選記事】


オピニオン

爆発的な信者増加を脅威とみなす共産党

By Walter Russell Mead
2020 年 12 月 24 日 14:55 JST 更新プレビュー




――筆者のウォルター・ラッセル・ミードは「グローバルビュー」欄担当コラムニスト

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 欧州議会が中国による新疆ウイグル自治区のイスラム教徒迫害を巡り、同国との投資協定を阻止する構えを見せている。中国政府による香港取り締まりの波紋もまだ消えていない。米次期政権の対中政策を巡る議論も白熱している。この状況で、人権を巡って国際社会で再び大きな波風を立てることは中国にとってタイミングが悪いように思える。

 だが昨今の中国の政治家はこうした論理にほとんど興味がないようだ。自国のイメージを磨くことよりも、国内の反体制派を弾圧することの方が優先される。これは中国のキリスト教徒にとっては悪い知らせだ。数年前まで非公認の「家庭教会」が全国で拡大するのを黙認していた支配政党が、敵意を強めている。

 その寛容な時代は、過去2000年でキリスト教が最も普及した時期の一つと時を同じくしていた。文化大革命の終わりに推定300万人いたとされる中国のプロテスタント教徒の数は現在、1億人を超えたと考えられている(政府の発表では3800万人という信じがたい数字)。このほか、カトリック教徒が推定1000万~1200万人いる。米外交問題評議会は、中国のプロテスタント人口について9300万~1億1500万人とする米パデュー大学中国宗教・社会研究センターの推計値(2018年)を引用している。2010年以降に大幅に増加しており、2030年には米国を上回って中国が世界最大のキリスト教徒人口を抱える可能性があるとの予測もある。

 これは、米国との競争で中国が勝ちたくないと考える数少ない分野の一つだ。教会が中国共産党による言論弾圧の対象になるケースが増えている。取り壊された教会もある。十字架のような宗教的シンボルを地元の当局が撤去して「世俗化された」教会もある。当局は現在、信者の行動や牧師の説教を監視するためのカメラ設置を求めている。また、聖母マリアの絵の代わりに習近平国家主席の肖像画を掲げるよう強いられているカトリック教会の話も伝えられている。

 ナショナル・レビュー誌のキャメロン・ヒルディッチ氏は10月、共産党が政府公認の聖書をつくることを決定したとの新華社電について指摘した。ヒルディッチ氏によれば、変更点の一つは新約聖書の一節で、姦通(かんつう)で捕らえられた女を非難する者たちに対し、罪を犯したことのない者がまず石を投げなさいと言って女を許す部分だ。改訂版では、非難する者たちが去ると、イエスは自ら女に石を投げ、「私も罪深い人間だ。だが欠点のない人物だけが法を執り行えるのであれば、法は死んでしまう」と述べている。

 共産党が支配するはるか以前から、中国の指導者らは宗教集団が政情不安を引き起こす可能性を恐れた。欧米諸国が宣教師への特権を求めた歴史から、キリスト教は異質で脅威となりそうな信仰と見なされた。共産党は1949年に中国を支配すると、直ちに宣教師を追放し、国内のキリスト教徒を迫害した。キリスト教のプロテスタントとカトリックは、イスラム教や仏教、道教とともに中国で公認されている宗教だが、国が公認もしくは支配する教会以外に属する信者は違法とされ、看過されることはない。

 中国でキリスト教が爆発的に拡大していることは、毛沢東の死後に見られなかった方法で共産党の中央集権化を行うと決意している政府には容認できず、衝突は必至の情勢だ。中国のキリスト教徒の大半は都市部に住み、高学歴で、世界の情報網とつながっている。このため、キリスト教徒に厳しい圧力をかけることは、チベットや新疆、あるいは香港で起きたことよりもはるかに大きなダメージを中国の国際的立場に与えるだろう。共産党がキリスト教徒を迫害しているとの報道が広がれば、米国の世論への影響は甚大かつ長期に及び、米中関係の改善はおろか、安定への期待さえ消滅しかねない。

 中国の指導者らは、ポーランドの共産主義体制崩壊にローマ教皇ヨハネ・パウロ2世がいかに寄与したかを目の当たりにした。韓国のキリスト教徒が同国の民主化への移行で果たした役割にもおののいた。香港民主化運動でキリスト教徒が大きな役割を担ったことは、厳格な取り締まりを進言する人たちにさらなる根拠を与えた。非常に良からぬ何かが進行中かもしれない。

 国際的な孤立を深めるという代償を払って国内の多様性を抑圧する。党指導部がこの道を望んでいるなら、中国政府を止められる力などこの世には存在しない。だが、行き着く先で待つものを中国が気に入ることはなさそうだ。

 平和と友好を願うこの時期に、北京で節度と寛容が勝ることを願わずにはいられない。




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