欧州の新型コロナ禍は収まる気配がない。感染者も死者も日本とは比べものにならないほどに多い。例えばフランスの感染者は欧州最悪の250万人余り。また、ここイタリアは死者が7万人を超えている。各国はロックダウンやそれに近い厳しい行動規制を敷いて、感染拡大を食い止めようと必死になっている。そしてその多くが、それなりの成果を収めている。成果とは、感染拡大を劇的に抑えているという意味ではない。欧州が第1波の恐怖と絶望の時間を経て、コロナと共存する方法を日々学びつつある、という意味である。
欧州どころか世界でも最も悲惨な第1波の洗礼を受けたここイタリアでさえ、第2波の恐慌を冷静に受け止めてこれに立ち向かっている。イタリアよりも強い第2波に襲われてきた英独仏スペイン等も果敢にパンデミック(世界的大流行)に対峙(たいじ)し、恐れ、怒りつつも断じてパニックには陥っていない。一方、衛星放送のリアルタイム報道やインターネットを介して見ている日本は、雰囲気が全く違う。爆発的な感染拡大が続く欧米などに比べたら、どうということもない新型コロナ関連の数字に慌て、悲鳴を上げ、錯乱しているようにさえ見える。ここまでは運に恵まれたとしか思えない、日本の新型コロナの状況がふいに暗転する可能性はもちろんゼロではない。従って油断は禁物だ。だが日本がイタリアを始めとする、欧州各国の第1波時並みの阿鼻(あび)叫喚に陥る可能性は、低いように見える。
そんな事態が訪れても、日本は例えばイタリアや欧州各国を手本に、難局を切り抜ければいいだけの話だ。メディアも政府も国民も冷静になって、感染を抑えつつ経済も回す知恵を磨き、イタリアを含む欧州同様に威厳を持ってパンデミックに対峙していってほしい、と腹から思う。
(仲宗根雅則、イタリア在、TVディレクター)