国際
ウォール・ストリート・ジャーナル厳選記事

米海兵隊、日本で離島奪還訓練を強化中 【WSJ厳選記事】


国際

中国の脅威に対抗、小規模分散型の部隊と司令拠点に重点

By Alastair Gale
2021 年 1 月 4 日 12:25 JST 更新プレビュー



自衛隊との合同演習でCH-47ヘリコプターに乗り込む米海兵隊員 SHIHO FUKADA FOR THE WALL STREET JOURNAL

 【相馬原駐屯地】米海兵隊は西太平洋の島しょ地域での紛争に備えて日本での訓練を強化している。この地域は中国の軍事的脅威に対する米国の戦略転換の最前線となっている。

 海兵隊は、近年の作戦対象だった中東やアフガニスタンの過激派よりもずっと大規模で洗練された敵との対決に備えている。中国は今や、軍事衛星やサイバー戦能力、人工知能(AI)の活用、そして米国との差を縮めつつある攻撃能力により、米国防総省が「ほぼ同等」のライバルと呼ぶ存在になっている。

 最近行われた一連の演習では、2機の「CH-47チヌーク」ヘリコプターで着陸した数十人の海兵隊員が背の高い草に紛れて展開し、2機のティルトローター機「オスプレイ」で到着した日本の自衛隊員が続いた。想定された任務は、敵に察知されないよう行動し、敵のミサイルや砲弾の射程内にある島の港を奪回することだ。

 この演習は、小規模分散型の部隊と司令拠点に重点を置いたもので、敵に位置を特定されにくくして攻撃を避けるための新たな戦術を反映している。装甲車両3台で構成された指令拠点からの指示で行われた最初の訓練の一つだ。こうした拠点は数分で設置・移動ができ、探知可能な信号をあまり出さない。

 ノースカロライナ州のキャンプ・レジューン海兵隊基地を拠点とする第8連隊第3大隊指揮官のニール・ベリー中佐は「われわれはテントやコンピューター画面の利用を回避しようと努めている。その理由は第1に、地理的に極めて固定化されやすいこと、第2に、電磁的な情報を大量に発することだ」と述べている。



群馬県内に着陸する、自衛隊員が乗ったオスプレイ(12月15日)PHOTO: SHIHO FUKADA FOR THE WALL STREET JOURNAL


 中国の軍事的台頭により、国防総省が戦略や訓練計画を更新する上で新たな焦点が当てられるようになった。マーク・ミリー統合参謀本部議長は最近の発言の中で、中国の台頭は米国の安全保障にとって最も重要な課題であり、中国軍は米軍と肩を並べる水準に向かっていると指摘した。

 中国への対処法を探ることは、ジョー・バイデン次期米大統領にとって初期に取り組むべき最大の課題の1つだ。米上院は1日、国防権限法を成立させたが、その中には中国に対抗するための軍事作戦と戦略計画を賄う20億ドル(約2060億円)以上の予算が盛り込まれている。

 中国政府は自国の軍事力の増大が平和的なものだと述べている。米海兵隊が最近日本で行った一連の演習についてはコメントしていないが、過去にはこの地域での日米演習を「挑発」と呼んだことがある。

 国際関係と安全保障の専門家である南京大学の朱鋒氏は「中国に島々を占拠する意図は一切ないと思う。中国はどうすれば発展できるのか。軍事的冒険主義によってではない」と述べる。

 ワシントンのシンクタンク「ヘリテージ財団」の上級研究員ダコタ・ウッド氏は、中国が超高速ミサイルや無人システム、ロボットなど先進的な武器を開発したことで様相が一変したと話す。「これらは全て、米軍が過去30年間に対応を迫られてきたものと劇的に異なる」



自衛隊との合同演習で移動式の指揮統制拠点で活動する海兵隊員 PHOTO: SHIHO FUKADA FOR THE WALL STREET JOURNAL


 米国とその同盟国は、中国が「第1列島線」に挑んでくる可能性があることを懸念している。第1列島線は、日本列島から台湾とフィリピンを通り、南シナ海まで長く伸びる一連の領域を指す。ここで日本が支配する群島の近くを中国沿岸警備隊の武装船が航行した回数は2020年に1100回を超え、2012年に領有権をめぐる論争が起きて以降で最多となった。日米安全保障条約の下、米国は日本の防衛支援を約束している。

 台湾は、中国が香港の民主化運動を抑圧したことを受け、軍事予算を増額している。中国は台湾の近くで軍事演習を行っている。

 デービッド・バーガー米海兵隊総司令官は、海域での紛争で海兵隊がより大きな役割を果たせるよう、海軍との連携を強化し、その制海を支援する方法を模索している。

 海兵隊と自衛隊隊員は、日本を拠点とする米海軍第7艦隊とともに昨年10・11月に実施された演習で、沖縄に近い2島の占領を想定。敵艦艇を狙える移動式ロケットランチャーを配備する訓練を実施した。

 バーガー総司令官は、海兵隊が使える強力な対艦兵器として巡航ミサイル「トマホーク」の装備を求めているが、今年度の防衛予算には計上されていない。



群馬県での演習で海兵隊員を運ぶCH-47 PHOTO: SHIHO FUKADA FOR THE WALL STREET JOURNAL


 沖縄を拠点とする第3海兵遠征軍のカイル・エリソン副司令官によれば、海兵隊は、海軍および、海兵隊のような陸上自衛隊水陸機動団(2018年創設)と連携して、分散した部隊を広い戦場に展開する作戦行動を試している。

 「それは簡単ではなく、複雑で、訓練が必要だ。われわれは毎日訓練をしている」とエリソン副司令官は語った。

 昨年12月に行われた日米両国によるコンピューターによる年次シミュレーション演習では、海兵隊の分散型の指揮統制拠点を紛争時に調整する訓練も含まれていた。

 海兵隊の小規模で自己完結型の部隊には、敵に察知され攻撃目標となるリスクを減らす狙いがある。ただ米軍幹部は、これらの部隊は多くの中国兵器の射程圏内に入ることになるため、場所を特定されればより脆弱(ぜいじゃく)であることを認めている。中国は世界で最も多くの短・中距離ミサイルを保有する国の1つであり、米海兵隊に似た独自の部隊を作りつつある。




(c) 2021 Dow Jones & Company, Inc. All Rights Reserved Worldwide.


■ウォール・ストリート・ジャーナル(WSJ)について
琉球新報デジタルサービスWSJ特設ページ-琉球新報WebNews購読会員なら追加料金なしに米最大の日刊経済紙ウォール・ストリート・ジャーナル(WSJ)オンラインが購読できます

 



関連するニュース







  • お知らせ


  • 琉球新報デジタルサービス



  • 会員制サービス






  • 他のサービス