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東京五輪に暗雲、ワクチン接種遅れも影【WSJ厳選記事】


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日本人の懐疑論も深まる

By Rachel Bachman and Alastair Gale
2021 年 1 月 21 日 07:27 JST 更新プレビュー


 東京オリンピック・パラリンピック組織委員会は2020年から延期された大会の実施を6カ月後に控え、数々の障害に直面している。世界各地の新型コロナウイルス感染急増はその一つにすぎない。

 世界と米国の新型コロナワクチン接種を加速させる必要性や、懐疑的な日本の一般市民に対し、ワクチンを接種して海外からの多数の訪問者を迎えるよう説得することは、さらに大きなハードルかもしれない。

 国際オリンピック委員会(IOC)と日本の組織委は昨年3月、大会開催を2020年から21年へ延期した。決定が下されたのは開会の約4カ月前だった。ここに来て再び、21年の開催を巡り決断を下す期限が迫っている。昨年からの問題がなお残っている上、コロナ禍が続く中で複数の新たな問題も浮上している。

 主催者、選手、そして観客のワクチン接種は大きなテーマとなっている。

 組織委らは大会にやってくる選手やファンにワクチン接種を義務付けるつもりはないとしているものの、菅義偉首相はオリンピック開会式の7月23日までに日本人のほぼ全員がワクチン接種を受けられることを望むと述べている。日本は全人口に十分なワクチンを確保しているが、いずれも国内の規制当局の承認を得ておらず、接種はまだ始まっていない。

 日本では過去にワクチン絡みの健康被害があったために、ワクチン接種に対する懸念が比較的強い。市場調査会社イプソスによる10月の世論調査では、日本人の3分の1近くが新型コロナの予防接種を受けないと回答していた。米国立アレルギー感染症研究所(NIAID)のアンソニー・ファウチ所長は先月、新型コロナの集団免疫を達成するには、最大90%のワクチン接種率が必要となる可能性があると述べた。

 オリンピック関係者はさらに、大会を主催することに対する一般市民の懐疑論の深まりにも直面している。TBSが今月実施した世論調査では、オリンピックを計画通り開催すべきとの回答はわずか13%と、12月調査の28%から低下した。

 世界で徐々にワクチンが配布されているが、米国では1月1日までに2000万人にワクチンを投与する目標に対し、足元ではわずか3分の1程度の進捗(しんちょく)となっている。米疾病対策センター(CDC)の指針では、若くて健康なスポーツ選手より、高リスク層の数千万人の接種が優先される。各州によるこうした指針の実行状況の違いは、米国オリンピック・パラリンピック委員会(USOPC)関係者による計画立案を複雑にしている。

 USOPCの最高医療責任者、ジョナサン・フィンノフ氏は「こうした階層化プロセスにおいて、そのプロセスがどう機能しているのか、順番が来れば選手のワクチン接種をどう促進するかについて、多数の病院、州政府当局者と話をし、連邦当局者や企業とも議論しようと努めている」と話す。「全力を尽くしているが、確定された計画はまだない」

 米国選手は10カ月前の感染流行初期に比べればトレーニングしやすくなっているものの、それでも中断に見舞われてきた。

 コロラドスプリングス市にある米オリンピック・パラリンピック・トレーニングセンターは、地域の新型コロナ感染拡大と病院の負担増加を受けて12月上旬から閉鎖されていたが、先週に入り再開された。

 フィンノフ氏は当面のあいだセンター運営を続けられるよう願うとしつつ、コロナ変異種の発生によって、米国内の感染状況からワクチン・検査の効果に至るまで全てが一変しかねないと付け加えた。

 感染がなお広がっているという最も基本的な問題も、引き続き大会の見通しを複雑にしている。

 日本では、米国ほどの高い感染率は回避されてきたが、ここ数週間で感染が急増している。菅首相は1月13日、その数日前に出された緊急事態宣言の対象地域を11都府県に拡大すると発表。外国人の新規入国を原則禁止する措置を講じた。

 緊急事態宣言の期間は2月7日までの予定だが、政府に助言する医療専門家の間では、大会を巡る決断時期に近い春まで延長しなければならないかもしれないとの声が出ている。

 オリンピックのメイン会場となる国立競技場では既に、観客が新型コロナ検査で陽性と確認された初のケースが出ている。日本サッカー協会は1月10日、2万4000人超のファンが来場して開催された4日のサッカー決勝戦で、試合中に観客1人が体調不良に陥り、その後に新型コロナ感染が確認されたと発表した。

 オリンピック関係者は観客を制限する可能性について4月までに判断を下すとしている。無観客で大会を開催する可能性も排除していない。

 状況が悪化しているにもかかわらず、日本の主流報道機関からオリンピックの開催中止を求める声はほとんど出ていない。一方、1年延期されたことで大会経費は総額1兆6440億円に膨らんでいる。日本の全国紙はいずれも五輪のスポンサーになっており、ある新聞の論説委員によると、そのために各紙が大会を中止すべきとの社説を書くのをためらう結果になっているという。




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