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バイデン氏は中道路線を保てるか 左傾化の引力の中【WSJ厳選記事】


CAPITAL JOURNAL

米新大統領の初期の試金石、状況はこれから鮮明に

By Gerald F. Seib
2021 年 1 月 26 日 11:10 JST 更新プレビュー


――筆者のジェラルド・F・サイブはWSJエグゼクティブ・ワシントン・エディター

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 ジョー・バイデン氏の米大統領就任後間もない日々に関する多くの大きな問いの中で、これ以上に重要なものはない問いは、彼が中道路線の政治を維持できるのかというものだ。それとも彼は、中道から左へ引き寄せられてしまうのだろうか。

 就任第1週に見られた証拠はまちまちだった。最も無難な結論は、結論を出すのはまだ早すぎるというものだ。

 もちろんバイデン氏は、全体的に左に傾きつつあった民主党内で、中道派として選挙を戦った。民主党中道派の組織「サードウェイ」の政策担当エグゼクティブ・バイスプレジデント、ジム・ケスラー氏は「バイデン氏が大統領候補の指名を獲得できたのは、穏健派だという理由からだ。穏健派にもかかわらず、ということではなかった。そして穏健派として大統領選挙で勝利した」と述べている。

 しかし一部の共和党員は、バイデン氏が既に、早期の行動と取り組みの中で、その中道の基盤を捨て去ってしまったと主張する。マルコ・ルビオ上院議員(共和、フロリダ州)は、テレビ番組「FOXニュース・サンデー」の中で「行動の幾つかは、中道の中で最も左寄りの思考によるものだ。彼が使う言葉、論調、そして態度までもが中道的かもしれないが、これまでのところ、彼の政策は中道を代表するものとは思えない」と語った。

 バイデン氏が左に寄っている証拠として共和党員らが指摘する動きの中には次のようなものがある。移民、学校での性同一性の問題、軍でのトランスジェンダーの問題などで、トランプ前政権の政策を覆す大統領令を前例のないペースで出していること。新型コロナウイルス禍に伴う1兆9000億ドル(約197兆円)という巨額の追加経済対策の提案。この提案に盛り込まれた最低時給を15ドルとする案。カナダのオイルサンド地帯から米国に原油を輸送するための「キーストーンXL」パイプラインの建設許可取り消しの即時決定。何人かの強硬派を金融規制当局者に指名したこと。

 ただし、逆の兆候もある。バイデン氏が発表した主要人事の大半は、民主党主流派で占められており、進歩派の人物ではなかった。同氏はトランプ政権が行った学生ローン返済義務の凍結を延長したものの、単純に学生ローンを帳消しにするというリベラル派の要求には抵抗している。バイデン氏は、上院で予定されているドナルド・トランプ前大統領の弾劾裁判にあまり熱心でないように見える。

 恐らく最も重要な点は、同氏が上院での議事妨害(フィリバスター)廃止の動きを支持していないことだ。左派はそれを共和党による妨害を乗り越え、進歩派の政策目標を押し進めるための方法の一つとみている。

 上院共和党で3番手のリーダーであるジョン・バラッソ上院議員は、「判断するのは時期尚早だ」と述べ、「バイデン氏の思うようにさせれば」彼は穏健派の人物として政治を行うだろうと話した。

 バラッソ氏は「バイデン大統領が本当に国全体のための政治に興味を持っているのなら、彼が中道を維持する力になる必要がある」と付け加えた。

 早期に結論を導くことに慎重になるべき理由はたくさんある。バイデン氏は長年、民主党内でイデオロギー的に中間の立場を取ってきた。つまり、民主党が左に寄るに従って、彼の立場も左に寄ってきたということだ。それでも、バイデン氏の早期の行動のうち、どれが彼の本心と違う、交渉を有利に進める出だしの立場を示すものなのか、そして、どれが今は左派を懐柔し、時間の経過とともに彼が中道に戻るための努力を示しているのかを判断することは困難だ。

 例えば、上院共和党との駆け引きを経て、新型コロナ救済策の規模が最終的に1兆9000億ドルを下回るであろうことをバイデン氏が知っていることは、間違いない。民主党議員の多くはある理由で、政権が最初から高いところを狙ってほしいと考えている。彼らは2009年初めの経験を繰り返したくないと思っている。当時のオバマ新政権が金融危機脱却のために出した最初の経済刺激策は、議会での交渉を経て規模が縮小され、一部のエコノミストが後に本当に必要だったと結論付けた金額を下回る結果になったからだ。

 同様に、最低時給15ドルへの引き上げ要請も、交渉の過程で撤回せざるを得ないことを承知の上で新型コロナ対策に盛り込んだ可能性がある。しかし、賃金引き上げを現時点で提案することは、バイデン政権が同提案をある時点で法律として成立させることに真剣だとのシグナルを進歩派に送ることになる。サードウェイのケスラー氏は「新たな大統領、新たな上院指導部の下で生じる当然ともいえる振る舞いに過剰反応しないようにしよう。彼らは自分たちの領域を主張しているところだ」と話す。バイデン氏に中道派としての政権運営を望むケスラー氏は、「私を楽観派の一人として考えてもらっていい」と述べた。

 保健医療、経済、社会の深刻な危機が同時に存在する中で政権を引き継いだとバイデン氏および彼のチームが考えていることは間違いなく、それが政権発足当初の活発な行動の背景にある衝動だった。

 それでも時間の経過とともに、バイデン氏の生来の傾向や、政治勢力のほぼ均衡した状態の影響が表に出てくるだろう。例えば民主党はフィリバスターに関し、全ての民主党上院議員が同意しない限り、この規定を廃止することはできないが、ウェストバージニア州選出の上院議員、ジョー・マンチン氏は同意しないと公言している。非公式には左派の一部活動家でさえ、フィリバスターの廃止を望んでいない。彼らは、共和党が再び議会を支配した場合、フィリバスターが存在しない結果、例えば人工妊娠中絶を規制する法律の成立につながることを懸念している。

 新型コロナウイルスの包括経済対策をめぐる新政権と共和党指導者の本格的交渉が始まる今週、状況はより鮮明になっていくだろう。それは、とりわけ、全ての当事者を言葉だけの世界から厳しい現実に押し出すことになる。




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