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「クラブハウス」と「スペース」、試す価値あり WSJ記者レビュー【WSJ厳選記事】


パーソナルテクノロジー

コロナ禍の一時的流行だとしても、話題になるには理由がある

By Joanna Stern
2021 年 2 月 19 日 17:44 JST 更新プレビュー


今話題の音声のみのソーシャルメディアはどのようなものなのか。ジョアンナ・スターン記者が「クラブハウス」とツイッターの「スペース」を実際に利用し、その魅力を探った Photo illustration: Kenny Wassus for The Wall Street Journal


――筆者のジョアンナ・スターンはWSJパーソナルテクノロジー担当コラム二スト

***

 気がつくとバスルームでワイヤレスイヤホン「AirPods(エアポッズ)」を片方の耳に差し込み、招待制音声SNS「Clubhouse(クラブハウス)」で人工知能(AI)の未来に関する生の会話を聴いていた――。今日では、これは完全にいたって普通のことだ。

 といっても、普通でない今の時代には完全に普通ということだが。

 筆者のスリリングな生活をちょっとお見せしよう。そうすれば、音声生配信のみのソーシャルメディア、特にクラブハウスとツイッターの「Spaces(スペース)」について、なぜ今誰もが話題にしているのか、その理由の一部が分かるだろう。

•とても簡単に、どこにいても会話に加われる。

• 使用するのはマイクだけでカメラはないため、自分の髪型や背後にある色分けされた本棚などについて気にする必要がない。

• 思いがけない人とつながれる素晴らしいツール。出張旅行や直接会って話すカンファレンスが1年近くないため、著名人とつながれるのはワクワクする。

 音声社会革命には、今はまさにうってつけのタイミングだ。また、たとえこれが新型コロナウイルス禍による一時的な流行にすぎないとしても、試してみるべきだ。

 アプリの中で興味を引くトピックを探り当てる――あるいは、少なくとも事前に目星を付けておく――必要はあるかもしれないが、ほとんどの人にとって何かしら関心が持てるものが既にある。ラジオのトーク番組、ポッドキャスト、カンファレンス、ビジネス用ソーシャルメディアのリンクトイン、ツイッターを高速でミキサーにかけたようなものだと考えればいい。専門家や著名司会者の一人語りや会話だけでなく、新進気鋭のコメディアンやミュージシャンによるパフォーマンスや、ビットコインや起業など共通の興味を持つ少数の人たちの集まりもある。

 中でも最も注目を集めているのが、クラブハウスだ。昨年3月に提供が開始されたiPhone(アイフォーン)のみに対応した完全招待制のアプリで、生配信のみでアーカイブも残されない。調査会社アップアニー・インテリジェンスによると、アプリのダウンロード数は提供開始以来800万回を突破し、米国では260万回となっている。

 次に注目なのは、クラブハウスのクローンとも言うべきツイッターの「スペース」だ。これは現在、限られた人しか利用できないテスト段階にあり、年内に一般公開される予定だ。

 筆者はクラブハウスとツイッターのスペースを実際に利用し、そこで複数の人たちと会話してプラットフォームの真(しん)の狙いを探った(その内容については筆者の動画や本紙のポッドキャストで聴ける)。

常時オンの環境ソーシャルメディア

 フェイスブックやツイッター、インスタグラム、TikTok(ティックトック)などのフィードを軸とするソーシャルネットワークは、指でスクロールしたり、目で読んだり、見たり、視聴したりする必要がある。一方、音声ソーシャルで必要なのは耳だけだ。いったん聴き始めたらスマホをしまい、運転や犬の散歩、家事に戻れる。

 クラブハウスアプリは、バーチャルな舞台が備わったさまざまな部屋(ルーム)がある大きなビルのようなものだ。メインの廊下を歩いて(スクロールして)いくと、全てのルームのドアが開いているのが見える。それらは誰をフォローしているかやどのような事に関心を持っているかに応じてお薦めされる。どれかをタップすると、ルーム内の会話が自動的に聞こえてくる。全て生配信で、録音機能も録音再生機能もない。


クラブハウス(左)とツイッターのスペース(右)は見た目も機能も似ている PHOTO: JOANNA STERN/THE WALL STREET JOURNAL


 ツイッターのスペースも似たような仕組みだ。フォローしている誰かがスペースを開設すると、ツイッターのiPhone向けアプリの最上部の行に紫色のアイコンが表示される(クラブハウスもツイッターのスペースも近くアンドロイドにも対応する予定)。

人脈作りにうってつけ

 おしゃべりしたいムードであれば、スマートフォンを手元に置いておくといいだろう。クラブハウスでは、ルームにいるときに手の絵文字ボタンをタップすると挙手できる。当てられたら、質問をしたり、コメントしたりできる。ツイッターでは、マイクのアイコンをタップすれば、発言の許可を要請できる。いずれも、誰が発言できて誰ができないかはモデレーター(進行係)が決める。

 自分で部屋を開設することも可能だ。クラブハウスでは、ルームの名前でどのようなトピックかを知らせることができる。そうすることでバーチャルイベントの雰囲気を出せる。多くのルームがテクノロジーやメディア、金融、暗号資産(仮想通貨)、エンターテインメント、医薬品、不動産などさまざまな業界を軸にしている。

 「Café Bitcoin(カフェ・ビットコイン)」という名のグループは、暗号資産「ビットコイン」について会話するさまざまなルームを毎日、最長24時間開設している。このグループの創設者であるビットコイン取引所スワンビットコイン・ドット・コムのコーリー・クリップステン最高経営責任者(CEO)は、今は1週間に平均30時間をクラブハウスで過ごしていると話す。


クラブハウスではビットコインや音楽、コメディーなど似たようなことに関心を持つ人たちが「クラブ」に集う。どれか一つに参加すると、そのグループが主催するイベントの通知を受け取れるようになる PHOTO: JOANNA STERN/THE WALL STREET JOURNAL


 筆者も過去数週間にいくつかルームを開設した。トピックはもちろん「クラブハウス」と「音声ソーシャル」だ。

 開始から数分で聴衆が入室し、手を挙げ始めた。フォロワーが一握りしかいない個人もいれば、大勢のファンがいる人もいた。イベントの一つでは、著名ブロガーのペレス・ヒルトン氏が飛び入り参加し、発言してくれた。大抵の場合、ルームが終わるとすぐに、交流や情報交換を求める人たちからツイッターやリンクトインで連絡を受けた。

 ツイッターでは、スペースはもっとユーザーにひも付いている。スペースを開設すると、フォロワーは入室できる。ただし、発言できるのは最大10人までだ。ツイッターは来週のリリースで、スペースにトピックの名前を付けたり、会話の最上部にツイートをピン留めしたりできるようにする予定。

優れたエンタメにも

 クラブハウスには娯楽を楽しめる場所もある。

 コメディアンで声優のマシュー・フレンド氏や同氏の仲間はコメディーや即興ルームで爆笑もののものまねを披露している。現在クラブハウスに100万人を超えるフォロワーがいるポッドキャスターでコメディアンのアレクシス・ゲイ氏は、米東部時間の毎週水曜日午後8時にさまざまなゲストをローテーションで招いてルームを主催している。
 


クラブハウスに公開ルームを作成すると、メインの「廊下」に表示され、ユーザーはそこで詳しい内容を読める。ルームに入室すると、聴衆の中にアイコンが表示される PHOTO: JOANNA STERN/THE WALL STREET JOURNAL

 ミュージシャンもいる。毎晩、米東部時間午前0時になると、さまざまなミュージシャンが癒やし系の音楽を演奏する「Lullaby Club(ララバイ・クラブ)」に数百人が入室している。

さまざまな問題点も

 クラブハウスが筆者のスマホに登録された連絡先にアクセスしていたこと自体は驚かなかった。筆者はそれを許可していたからだ。アプリに友人がいるかどうかを確かめたり、誰かを招待したりするには、そうせざるを得ないためだ。しかし、それらがクラブハウスのサーバーに保存され、知り合いが登録するたびに通知を受けるために使用されるとは知らなかった。もっと悪いことに、筆者のセラピストにはクラブハウスに友人が2人いることまで知らせてくれた。
 


クラブハウスアプリでは、誰かを招待したければ、スマホの連絡先へのアクセスを許可する必要がある PHOTO: JOANNA STERN/THE WALL STREET JOURNAL

 現在、自分でクラブハウスのサーバーから連絡先を削除する方法はない。同社の広報担当者は、連絡先をアプリから直接削除できる機能を近く追加する予定だと述べている。取りあえず今はsecurity@joinclubhouse.comにメールして要請すれば、連絡先やアカウントを削除してもらえる。

 もう一つの懸念は、米スタンフォード大学がリポートで指摘した、クラブハウスにインフラソフトを提供する中国企業経由でユーザーデータが中国政府に利用されるリスクだ。クラブハウスの広報担当者は、同社では既にこの欠陥に対処しており、データ保護をさらに強化すべき部分を特定したと述べている。

 新興のソーシャルメディアアプリが、この点に関して失態を犯すのはよくあることだ。クラブハウスの共同創設者、ポール・デービソンとローハン・セス両氏は同プラットフォームで日曜の朝に定期的に対話集会を開き、成長に伴う多くの問題について語っている。透明性があるのは喜ばしいことだが、ソーシャルメディアの不祥事は10年前から起きているにもかかわらず、ユーザーのプライバシーやセキュリティーが後回しにされているように感じる。

 さらにコンテンツの監視の問題もある。生音声は監視がさらに難しい。

 クラブハウスもツイッターもユーザーやモデレーターが悪質なユーザーをブロックしたり、通報したりできる監視ツールを提供している。また両社ともコミュニティーガイドラインを作成し、差別やヘイトスピーチ(憎悪表現)、誹謗(ひぼう)中傷を厳しく禁じるなどしている。だが、他のプラットフォーム同様、問題はそれを実際に徹底できるかどうかだ。

 ツイッターの最高設計責任者を務めるダントリー・デービス氏は、適切な監視ツールがそろうまでは一般公開しない方針だと述べた。一部の新しい監視機能は次のリリースで導入される予定だという。また非公開のスペースについては、非公開のグループはより有害な事態を招きかねないため、よりよい監視ツールを出すまで認めない予定だとした(クラブハウスは非公開のルームを認めている)。

未完成のアプリ


クラブハウスはカメラは使用せず、常に音声だけだ PHOTO: KENNY WASSUS/THE WALL STREET JOURNAL


 完全なアプリなどないとはいえ、これら2つはまだベータテストの段階で、まさに目の前で構築が進められているような感じだ。

 クラブハウスでは、インターネット接続が弱いというアラートがよく出る(筆者のネット環境が原因ではない)。また、入室者が5000人を超えるとルームが閉鎖されてしまう。同社はルームの規模の拡大に取り組んでいると述べている。ツイッターのスペースのように、誰かの話を聞きながら絵文字や拍手で反応することもできない。

 デービス氏によると、ツイッターのスペースはクラブハウスの提供が開始される前の2019年から開発が進められていたというが、こちらも問題はまだある。筆者はスペースを拡大できなかったほか、スペース内にいる全員をスクロールして確認することもできなかった。また、音声の文字起こし機能もうまく機能しなかった。同社は現在、これらの問題に対処しているところだ。

 両社やこのトレンド全体にとって幸運なのは、私たちはまだあと数カ月はコロナで部屋にこもり、座って誰かの会話に耳を傾ける時間がありそうなことだ。




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