written by 当銘千絵(中部支社報道部)
山芋の生産が盛んな読谷村では、1株から採れる実の重量を競う「山芋スーブ(勝負)」が名物となっている。毎年12月、字ごとの予選大会を勝ち抜いた代表が頂点を競う一大決戦は大いに盛り上がり、興味深く取材している。
読谷村を担当してはや2年。那覇で生まれ育った私は着任当時、恥ずかしながらスーブという風習、いや言葉すら知らなかった。おじぃたちに魅力を聞くと、返って来る言葉は大体同じ。「掘ってみるまで分からないのが楽しいさ」。大会前には各字代表が集い、酒を酌み交わしながら、どれだけ自分たちの“まだ見ぬ”芋が立派に成長したかをアピールする「ほら吹き大会」まであるのだ。
作り手の多くは男性で、女性たちは決まって「山芋づくりはおじぃのロマン、おばぁの不満」だと苦笑する。せっかく収穫しても家で余りがちなのだ。そこで立ち上がったのが村商工会女性部。レシピコンテストで一般から募った食し方を、広く周知する取り組みも始めた。おじぃが耕し、お母さんが調理し、子どもたちが頰張る。そんな姿を見ていたら、山芋が地域や家族をつなぐコミュニケーションツールになっていることに気付かされた。人付き合いが希薄になりがちなこの時代だからこそ、読谷村の和やかな風習がまぶしく映る。
(読谷村、嘉手納町担当)
ゆんたくあっちゃー 県内各地を駆け回る地方記者。取材を通して日々感じることや裏話などを紹介する。