「パーントゥ」守り伝えたい 宮古島市島尻の伝統行事 絵本作成へ寄付募る 来月15日まで


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協力を呼び掛ける「島頭」の邊土名清志代表(右)と花城周作副代表=5日、宮古島市島尻

 「地域の神事や文化、言葉をしっかりと伝えたい」―。宮古島市島尻地区の住民が地域を守るために新たな取り組みを始めている。地域で唯一の商店「島尻購買店」を運営する合同会社「島頭(すまず)」(邊土名清志代表)は、島尻の伝統行事でユネスコ無形文化遺産にも登録されている「パーントゥ・プナハ」を題材にした絵本作成に乗り出し、今年2月末から資金造成のためにクラウドファンディングを始めた。邊土名代表は「地域を未来に残すための取り組み。理解ある方たちに協力してもらえたらありがたい」と話した。

 「パーントゥ・プナハ」はキャーンというツル草で全身を覆い、泥だらけのパーントゥ(来訪神)が島尻集落の各家庭を回り、人や物に泥を塗って厄払いする神事。集落でひっそりと続けられてきたが、県内外のメディアに秘祭として取り上げたことから注目され、世界中から観光客が集まるようになった。近年では集落の人口の倍以上の人が見物に訪れる。

 一方で新たな問題が浮上した。邊土名代表によると、服やカメラに泥を塗られた観光客が「汚された」と損害賠償を島尻自治会に求めてきたり、集落を歩くパーントゥを後ろから殴ったりすることもあった。

作成予定の絵本の一部

 邊土名代表は「集落の神聖な神事であって、観光客をもてなすための祭りではない。意味を理解せずに来て苦情を言う。そんな人が増えた」と明かす。「地域を守るための大切な神事だと理解してもらわないと続けられない」

 島頭が中心となって協議を重ね、絵本にすることで幅広い年齢層に理解してもらえるのではないかと絵本化を決めた。絵本は島尻の方言で作り、売り上げは購買店の維持費に回すことも決定した。島頭副代表の花城周作さん(45)は「神事を守る、購買店の維持、地域の言葉を残す、パーントゥへの理解促進―と四つの目標が込められている絵本です」と話す。

 絵本は邊土名代表が祖父から聞いたパーントゥの伝承話を題材にしたオリジナルの物語。絵も邊土名代表が下書きし、デザイナーの邊土名代表のおいが仕上げた。文章は島尻の方言でつづり、現代語訳を付ける。15ページで千部刊行予定。クラウドファンディングの目標額は250万円で、4月15日が期限だ。

 返礼品には絵本の他、ポストカードやパーントゥをかたどったボトル入りの泡盛など募金額(3千円~2万円)に合わせて用意した。邊土名代表は「パーントゥがなぜ受け継がれてきたのか、どれほど大切な神事なのかを広めるためにも多くの人が協力してくれたらうれしい」と語った。

 寄付はこちらから。
 (佐野真慈)