教科書の沖縄戦記述、一中健児之塔を「顕彰碑」 明成社の歴史総合 誤り認め修正へ


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文部科学省の教科書検定に合格した明成社の「歴史総合」。一中健児之塔のキャプションで「顕彰碑」と紹介している。ひめゆり学徒隊についても部隊と記述している

 【東京】文部科学省が30日に検定結果を公表した2022年度の高校教科書で、沖縄戦について取り上げた歴史教科書の一部に、県立第一中学校の学徒戦没者を慰霊する「一中健児之塔」を「顕彰碑」とする記述があることが分かった。沖縄師範学校女子部、県立第一高等女学校の教師・生徒らによる「ひめゆり学徒隊」を「部隊」とも記述した。これらの記述があった教科書は、東京都世田谷区の出版社「明成社」の「歴史総合」。そのほか、歴史総合は合格した12冊中7冊が沖縄戦の「集団自決」(強制集団死)を記載した。米軍基地問題は歴史総合、公共の検定を合格した全社の教科書が取り上げた。

 那覇市首里金城町にある一中健児之塔の管理者は「表記は誤りだ」などと反発し、専門家は「顕彰碑とすることで、学徒の戦死を美化する用語となっている」と問題視した。

 「明成社」の「歴史総合」は沖縄戦を紹介する中で、同塔の写真に添えられた説明文に「県立第一中学校の戦没学徒の顕彰碑」と記した。同じ文中でひめゆり学徒隊について、「ひめゆり部隊」と表記した。沖縄戦の様子を説明する文章中にも「軍官民一体となって激しい戦闘をつづけた」と、市民が戦闘に積極的に参加したかのような誤解を与えかねない記述もあった。

 1950年に沖縄戦で亡くなった一中学徒の慰霊を目的として同塔を建立し、管理する「養秀同窓会」は、「公式に顕彰碑と説明したことはない」と説明した。

 また、養秀同窓会によると、本紙取材を受けた明成社が30日午前、会に連絡をしないまま一中健児之塔を掲載し、「顕彰碑」と紹介したことへの謝罪の言葉があったという。「慰霊碑」に改める意向も示したという。一方、明成社の担当者は本紙取材に、編集部で塔の写真を撮影したとし、「検定作業が終わり、出版が決まった段階で掲載の許諾を得ようと思っていた」と説明した。表記変更などについては「社内で対応を検討中で、今の段階ではお答えできない」とした。

 沖縄戦に詳しい沖縄大学の新城俊昭客員教授は「顕彰との表現は、学徒の戦死を美化している。ひめゆり学徒隊をひめゆり部隊と記述しているのも問題である。部隊とは軍隊編成上の各級組織の総称で、法的根拠もないまま補助兵力として戦場に動員された女子学徒の編成を『部隊』と称するのは誤りだ」と指摘した。