「戦死の美化は許されない」 教科書「顕彰碑」の記述 元学徒ら声明へ


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声明について検討する「元全学徒の会」や、一中の関係者ら =31日、那覇市

 文部科学省の高校教科書検定に合格した一部の歴史教科書で、県立第一中学校の学徒戦没者を慰霊する「一中健児之塔」を「顕彰碑」などと記していた問題で、沖縄戦に動員された県内21の師範学校や中等学校の元学徒らでつくる「元全学徒の会」は1日、「戦死を美化することは許されない」という声明を出す。31日、同会の共同代表や幹事らが集まり、声明の文言について詰めの話し合いを進めた。

 「明成社」の「歴史総合」は沖縄戦を紹介する中で、県立第一中学校の戦没者らの名前を刻み、慰霊する那覇市首里金城町の「一中健児之塔」の写真に添えた説明文に「県立第一中学校の戦没学徒の顕彰碑」と記した。さらに「県立女学校の女学生がひめゆり部隊などの看護隊として編成された」とも記す。

 沖縄戦当時、一中に在籍し「元全学徒の会」幹事を務める、宮城政三郎さん(92)は「戦後76年たって、なぜ美化するような表現が出てくるかと言えば、大義なき戦争に対する反省が弱いからだ」と指摘する。その上で「中学生の戦死を美化することは許されない。戦争で亡くなったことは誇らしいのではなく、死ぬまで心に引っ掛かって悲しい。それが私たちの心情だ」と訴えた。

 同会共同代表の瀬名波栄喜さん(92)は「亡くなった学徒を決して英雄視してはいけない。慰霊碑は、戦意高揚のために造られた忠魂碑とは違う」と強調した。同会は1日午後2時から那覇市の養秀会館で記者会見を開いて声明を発表する。