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ミャンマー経済崩壊、工場も銀行も人影なく【WSJ厳選記事】


アジア・オセアニア

2桁マイナス成長予想、貧困層は1年で180万人増加へ

By Jon Emont
2021 年 4 月 13 日 08:29 JST 更新プレビュー


 【シンガポール】ミャンマーの銀行支店は閉鎖され、政府職員は仕事をボイコットしている。工場労働者は地方の実家へ逃げだし、外資系企業は駐在員を出国させた。インターネットはほとんど遮断されたままだ。

 ミャンマー軍がクーデターで全権を掌握し、抗議行動の抑圧に乗り出してから2カ月余り。同国経済は崩壊状態にある。世界銀行などは今年の国内総生産(GDP)が2桁のマイナス成長になると予想している。こうした激変は、ミャンマーが取り組んできた貧困削減の大きな進歩を帳消しにし、この10年間に国内経済の底上げに貢献した外国企業や観光客を脅かし、遠ざけている。

 ミャンマーはもともとアジアの最貧国の一つだ。低中所得国の貧困水準である1日当たり3.20ドル(約350円)以下で生活している人は600万人に上る。栄養不足のために、子供の4分の1は年齢の割に体が非常に小さい。

 これには理由がある。ミャンマーは半世紀にわたり、軍人による悲惨な政策で支配されていた。だがここ10年で、民主化を通して部分的な文民統制がもたらされ、国外からの投資も増加した。世銀のデータによると、貧困率は2010年の42.2%から17年には24.8%へ低下していた。

 こうした過去10年の進歩はここに来て逆回転している。世銀によると、選挙で選ばれた政府を倒したクーデターを受け、1日当たり3.20ドル以下で生活する人々の数は2021年に30%増加する見通しで、1年で貧困層が180万人増える計算になる。

 世銀はクーデター前、21年9月までの12カ月間のGDP成長率を2%と予想していた。現在はマイナス10%と予想している。落ち込みはさらに大幅になるとの予想もある。フィッチ・ソリューションズは、人々の購買が減り、税収減で政府支出も急減することから、成長率がマイナス20%になると予想する。

 クーデター以降、民主主義への復帰を求める抗議行動が街中に広がったが、軍による激しい弾圧に直面している。

 監視団体「政治犯支援協会」によると、庭先や自宅で銃弾に倒れた子供も含め、これまでに600人以上が殺害された。

 経済的な混乱には意図的な部分もある。公務員や銀行員、工場・港湾労働者は、軍政権が統治できないようにするために、仕事には行かないと述べている。民間銀行最大手のKZBのウェブサイトによると、同行は職員のストライキにより、500余りの支店のうち14店舗しか営業していない。

 「十分なスタッフと人的能力がなければ、経済を運営することは不可能だ」と語るミャンマー・オリエンタル銀行の営業担当者、カウン・フテト氏(30)は、2月から出勤していない。

 銀行業界で働く2人の関係者によると、ミャンマー中央銀行は営業を再開しない銀行に対し罰金を科す構えだ。KBZは先月、従業員向けの通知で「再開しなければ、規制当局が介入して再開するという、勝ち目のない状況」にあると述べた。ウォール・ストリート・ジャーナル(WSJ)は通知の写しを確認した。

 だが、中銀は自らの職員を勤務させるのに手を焼いている。中銀職員およそ300人が出勤を拒否して停職処分を受けている。中には家族の住む村に帰省した者もいる。2月から欠勤中の銀行幹部が語った。この幹部は、逮捕者が続出する中、警察に拘束されるかもしれないと恐れていると話した。

 経済的な痛みは広範囲に及んでいる。スウェーデンの衣料小売り大手ヘネス・アンド・マウリッツ(H&M)やイタリアのベネトンなど大手ブランドが新規注文を見合わせているため、ミャンマーの輸出の約4分の1を占める衣料品業界は商売を失った。工業地帯での抗議活動や暴力的な取り締まりのせいで工場労働者はそれぞれの村に帰り、深刻な物資不足が発生している。

 夜間の停電や、日中の携帯・無線ブロードバンドの接続障害など、大規模なインターネット規制によって金融業からサービス業に至るまで、さまざまなビジネスが打撃を被っている。ヤンゴンのあるレストランオーナーは、新型コロナウイルス感染流行を乗り切るためにネットでの注文に頼っていたが、そうした注文がほとんどなくなり、売り上げが7割も減ったという。

 ここ10年で5倍になった国際的な観光業も揺らいでいる。このレストランオーナーは欧州や北米からの旅行者を対象とした旅行代理店も経営しているが、コロナ禍ではスタッフの解雇を避け、代わりに勤務時間を減らして通常の半分の賃金を支払っていた。だが今では、従業員の解雇を準備している。




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