「同一賃金」コロナで遅れ 経営協調査 県内「対応済み」32% 不明瞭な基準、戸惑いも


社会
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 非正規職員と正社員の間で、給与や手当などの不合理な待遇差を禁止する「同一労働同一賃金」に関する法律が1日から中小企業に適用された。一方、昨年10月に県経営者協会(県経営協)が会員企業を対象に実施した調査では、非正規雇用がいると回答した85社のうち、必要な対応を終えたのは32%に当たる24社にとどまった。「同一労働」の判断基準が不明瞭なことや新型コロナウイルス感染拡大による景気悪化の影響で、県内企業の対応が遅れているとみられる。

 法の適用を受け、非正規職員から待遇差の説明を求められた際、事業主はその理由を説明しなければならない。格差是正の対象となる待遇は、基本給や賞与、各種手当、福利厚生、退職金などだ。

 調査では、非正規職員が働く85社のうち、22・4%に当たる19社で、非正規職員が正社員と同様の業務内容や責任の度合いを担っていた。

 該当者は約400人で、非正規職員の過半数を占めた。社労士らによると、県全体でも同様の傾向とみられ、格差是正の対応が急がれる。

 また、回答した約8割の企業が、正社員と非正規職員の間で、賞与や基本給に「差がある」とした。住宅手当や精勤・皆勤手当は、非正規に対して「支給なし」とする企業が6~8割を占め、待遇差が生じている。

 まず手当から

 沖縄働き方改革推進支援センターは、待遇差の是正に取り組む企業を支援している。相談では、事業主から自社の待遇が法に対応しているか、労働者への説明が合理的であるかといった戸惑いの声が多いという。

 職務内容や責任の度合いなど個別事例に応じて待遇が変わるため、法律は何が不合理な待遇差に当たるか、基準を定めていない。

 センター長で社会保険労務士の岡輝一氏は「まずは手当から見直してほしい。支給目的や必要性を整理してほしい」と助言する。

 法的に不合理な待遇差だと認められやすいのは通勤手当だ。「通勤にかかる移動費用」として手当を支給する場合、雇用形態にかかわらず、等しく支給しなければならない。

 賞与は利益を還元する目的の場合、非正規にも支給しなければならない。だが職務内容や責任の度合いに応じて支給する場合もあり、この場合は必ずしも不支給が不合理とされるわけではないという。

 助成金利用を

 県経営協の調査では待遇差の見直しで、回答した企業の7割が総額人件費が「上昇する」と答え、「コロナ禍で人件費が上がる施策は対応し難い」との声も上がった。

 県経営協の田端一雄常務理事兼事務局長は「業績のいいところもあるが、定期昇給がままならない企業もある」と、県内企業の厳しい現状を語った。

 一方、岡センター長は「待遇差の見直しで業務効率の向上も期待できる」と話す。非正規社員の正社員化や処遇改善を支援する「キャリアアップ助成金」などを利用し「前向きな気持ちで『同一労働同一賃金』の考え方を取り入れてほしい」と呼び掛けた。
 (比嘉璃子)

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 「同一労働同一賃金」に関する相談は、沖縄働き方改革推進支援センターまで。社労士が企業を訪問して相談に応じる個別訪問にも対応する。連絡先は(電話)0120(420)780、0120(420)781。