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東京五輪「なぜ止められない」 反対派の活動続く【WSJ厳選記事】


国際 オリンピック

中止または再延期すべきと考える日本国民は70%以上

By Alastair Gale
2021 年 4 月 15 日 15:52 JST 更新プレビュー


 【東京】新型コロナウイルス感染者が日本各地で再び増加する中、東京オリンピック・パラリンピック競技大会(東京2020)に向けて最終段階に入った準備イベントは、変更を余儀なくされている。開幕まで4カ月を切った東京五輪を予定通り実施することに日本国民はおおむね反対の立場だ。

 五輪開催に反対する活動家いちむらみさこ氏(49)は、この状況に手応えを感じてもおかしくない。だが実際は大会関係者と同じように、結果を出すことへの圧力を実感している。

 次の夏季五輪への反対運動を行う「パリの人たちからプレッシャーが来ている」と彼女は話す。「(日本の現状を考えると)今なぜ止められないのかと」

 反オリンピック運動としては異例のシナリオだ。独裁国以外で開催される大会では、多額の費用や汚職、地域社会や環境への影響といった問題を巡り、必ずと言っていいほど抗議運動が起きる。それでもオリンピックは着々と進められてきた。

 だが今回は異なる結果になる可能性がある。東京都は9日、感染者数の増加を抑えるため、飲食店にさらなる時短営業を要請した。大阪府では今週、聖火リレーが公道ではなく、観客のいない公園で実施された。府内でコロナ感染者数が過去最多の水準に達しているためだ。

 飛び込み、水球、水泳の種目では五輪に向けて不可欠な準備イベントが延期されたり、開催が危ぶまれたりしている。国際水泳連盟(FINA)は、飛び込みの東京五輪最終予選とテスト大会を兼ねたワールドカップ(W杯)について、選手の安全対策が不十分な可能性などを考慮して当初予定の4月から5月に延期した。

 一方、共同通信社が行った最新調査では、東京五輪・パラリンピックを中止または再延期すべきと考える日本国民が70%以上を占めることがわかった。

 東京大会は7月23日に開幕する予定。主催者は引き続き計画は順調に進み、テスト大会は必要に応じて予定を組み直すとしている。東京2020組織委員会の橋本聖子会長は、準備イベント開催についてFINAと協議していると述べた。

 「東京大会がより安心安全で歓迎されるものになっていくために、世界の皆さま方にもご理解がいただけるような大会開催に向けて全力で準備していく。その思いでこれからもしっかりやっていきたい」との考えを同氏は示した。

 こうした混乱を受け、オリンピックの全面中止を訴えるいちむら氏のような人たちは、まさにこの機を逃すべきではないと考えている。

 先日の夕刻、大会組織委員会の本部前で行われた抗議デモでは、いちむら氏のほか十数人の活動家が、貧困者の命が奪われるなどと書かれた横断幕を掲げ、拡声装置を使ってウイルスの脅威について訴えた。帰宅途中の人々が通り過ぎる中、立ち止まって携帯電話で写真を撮る人もいた。

 「命を優先するのではなく、まるで金メダルを優先するようなオリンピックはいらない。ぜひ住民の方々、一緒に声を上げましょう」といちむら氏は呼びかけた。

 アーティストのいちむら氏は、東京が五輪開催都市に選ばれた2013年に結成した「反五輪の会」の実質的なリーダーだ。当時、世論調査では日本人の大多数が五輪招致を支持していた。

 いちむら氏や約10人のメンバーは、当時計画中だったオリンピックスタジアム(新国立競技場)周辺の住民らが立ち退きを強いられたことや、2011年の東日本大震災が引き起こした福島第一原子力発電所のメルトダウンでまだ大勢の人々が苦しんでいることから、五輪開催に抗議することを決意した。

 2003年から都内の公園でテント暮らしを続けるいちむら氏は、新国立競技場の敷地の一部となった公園から強制退去させられたホームレスの何人かと知り合いだった。

 彼らの抗議活動に関心を示す人はほとんどいなかった。いちむら氏は2016年のリオ五輪の直前にブラジルを訪れ、現地の抗議デモの激しさに驚いたと話す。中には数千人規模で開催されるものもあった。

 昨年、新型コロナが猛威を振るう中、彼らは東京五輪が中止されると確信した。だが当時の安倍晋三首相は1年の延期で合意し、この大会は人類がコロナを克服したことを示すチャンスになると述べた。

 「ちょっと原発の時と似ている。放射能があるにもかかわらずオリンピックを。コロナがあるのにオリンピックを。行政は同じ文脈でオリンピックをいうわけで、あの時は『復興五輪』、今回は『コロナ克服五輪』と言っている」とし、ポジティブなストーリーを作るためには何でも利用すると、いちむら氏は指摘した。

 いちむら氏は昨年、東京を訪問中の国際オリンピック委員会(IOC)のトーマス・バッハ会長と短い時間だったが顔を合わせた。バッハ氏のほうから近づいてきたのだが、後になって同氏はデモ参加者が自分に向かって大声を上げたと非難した。いちむら氏の話では、バッハ氏に開催中止を求めただけだという。

 コロナ感染拡大を機に、同グループを支持するメッセージが多く寄せられるようになり、最近、五輪関係者2人が女性蔑視発言で相次ぎ辞任した後、さらに増えたと、いちむら氏は話す。日本では公然と抗議運動を行うことはまれだが、先月、彼らが主催した抗議デモには約100人が参加。聖火リレーでも小規模な抗議が行われている。

 いちむら氏はコロナ感染流行が、望ましくはないものの、五輪中止の取り組みの助けになっていると認める。反五輪の会は大会組織委員会に対する抗議デモを続ける予定だが、たとえ中止が実現しても、反オリンピック運動の決定的勝利ではない。

 「中止する確率が高くなっている。ただ次に北京もやるだろうし、パリも(そしてその先も)」オリンピックは続くと彼女は話す。




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