官房長官「土地の選定問題なかった」 元防衛相らは驚きと困惑<宮古島汚職>


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記者会見する加藤官房長官=13日、首相官邸

 【東京】陸上自衛隊の宮古島配備に絡む収賄容疑で下地敏彦前宮古島市長が逮捕されてから一夜が明けた13日、永田町には波紋が広がった。加藤勝信官房長官は同日の会見で事件に言及したが、不正があったとされる土地の選定過程には「問題はなかった」との認識を示した。問題の土地が候補地になった2015年から陸自駐屯地の運用が始まった19年までに、防衛相の職務に当たった国会議員は5人に上り、沖縄防衛局では3人が局長を務めた。当時の防衛相らは、逮捕の一報に「びっくりした」など驚きや困惑の声を上げた。

 一方、当時の防衛省政務3役の一人は、「下地市長がしつこく(買い取るよう)言ってきていた」と振り返る。その上で、省内には「地域の利権に巻き込まれてはまずい」との認識があったとも明かした。

 加藤氏は13日の会見で、事件についての政府見解を求められ、「警察による捜査であり、政府としてのコメントは控えたい」と述べるにとどめた。

 また、駐屯地の移転先を決める上での選定過程について認識を問われ、「宮古島市とさまざまな意見交換を行い、地理的条件や隊員の生活の利便性などを総合的に検討した結果」だと回答。「特段の問題があったとは承知していない」との認識を示した。

 15年5月に「千代田カントリークラブ(CC)」が駐屯地の候補地に浮上し、19年3月に開設されるまでの間に、中谷元、稲田朋美、岸田文雄、小野寺五典、岩屋毅の5氏が防衛相を務めた。沖縄防衛局では井上一徳、中嶋浩一郎、田中利則の3氏が、防衛局長を務めてきた。

 このうち元防衛相の1人は「逮捕の報道にびっくりした。防衛省幹部に背景を聞いたが、詳細は分からない」と述べるにとどめた。別の元防衛相は「働き掛けがあったとされる時期をはっきりと認識していない。警察の捜査を待ちたい」と困惑気味に話した。

 ある防衛局長経験者は「宮古島市は敷地が限られていた。千代田CCは当初から有力な候補地で、自然な流れで決まった」とし、「事実関係がはっきりしないが、防衛省側への働き掛けは必要ではなかった」との認識を示した。