【識者談話】「母子家庭になるな」は国の責任放棄 上間陽子氏(琉球大教授)


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上間陽子氏(琉球大教授)

 居酒屋談義の無責任な誰かの発言ではなく、一国の大臣の発言とは耳を疑う。沖縄の歴史を知らなすぎる。沖縄で未婚の出生率が高い歴史的背景には、沖縄は米国の占領地だった時期があり、バースコントロール(産児制限)が効かない中で子どもを産むことが形成されていったことがある。日本で避妊方法の教育がなされていたとき、沖縄ではそれができなかった。第一義的責任は国にある。

 沖縄が大きなひずみの中に落とされていた歴史を、彼は知らなすぎる。また、母子世帯になれば貧困に陥るのは、単に国策の破綻だ。そこを修復しようとせずに「母子家庭での子育ては大変だから、母子家庭にはなるな」という話は、国の責任放棄だろう。

 単身でも貧困に陥らず、子どもを育てることができるという環境、社会をつくることが国の責任で、最も重要なことであるのに、そこに全く触れていない。

 確かに、若年出産で経済的に困難な状況に陥る事実はある。しかし、母子世帯が貧困に陥りやすい構造を変えて、単身でも安心して子どもを育てられる環境をつくることが、国のやるべきことだ。(教育学)

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