[日曜の風・浜矩子氏]独立なるか スコットランド 連合国イギリス


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浜矩子 同志社大・大学院教授

 6日、英国のスコットランドで自治議会選が行われた。勝者は、英国からの独立を目指す地域政党、スコットランド民族党(SNP)。狙っていた単独過半数には及ばなかったが、善戦した緑の党と合わせれば独立派が議会で多数を占める構図になった。

 英国という国の正式名称は「グレート・ブリテンおよび北アイルランド連合王国」という何とも長ったらしいものだ。グレート・ブリテンを構成するのが、スコットランドとイングランドとウェールズ。いずれも、かつては別々の国家だった。抗争を繰り返す中で、スコットランドとウェールズがイングランドの軍門に下り、併合される形でグレート・ブリテンが出来上がった。その後に、アイルランド島の北部がやはりイングランドの支配下に入った。このややこしい構図の中で、それぞれのパーツの「連合王国」への距離感はさまざまだ。イングランドは、我こそは連合王国そのものだと考えている。ウェールズは面従腹背。北アイルランドは、連合王国派と、お隣のアイルランド共和国入り願望派に分かれている。

 最も脱英気運が強いのが、スコットランドである。1707年にイングランドに屈するまで、死に物狂いの抵抗を続けた。そのDNAが今日まで受け継がれている。

 サッカーのワールドカップの試合でイングランド・チームが他国代表と対戦する時、スコットランド人たちは決してイングランド側を応援しない。英国の中央政界で、イングランド勢が大勢を占めていることにも、スコットランド人たちは大いなる不満を抱いている。

 英国のEU離脱に関する2016年の国民投票において、イングランドでは離脱支持派が多数を占めたが、スコットランドでは残留派が6割強に達した。何かにつけて水と油の両者である。

 最も本質的な問題は、イングランド人たちの感性の中にある。どこかに征服者の面持ちが漂う。やつらは、自分たちを同胞としてみていない。スコットランド人たちはそう感じる。それがいたたまれない。独立国家としてのスコットランドの誕生の日が、そう遠くはないかもしれない。

(浜矩子、同志社大・大学院教授)