32軍壕 若者目線で 中城の米須さん、仲間とアート制作


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32軍司令部壕のアート作品について説明する米須理恵さん。守礼門のほぼ真下には牛島満司令官室があったことがパネルを回すことで分かるようになっている=13日、那覇市泉崎の琉球新報社

 首里城地下の日本軍第32軍司令部壕について多くの人に知ってもらおうと、20~30代の若者も動き始めている。2年前の辺野古埋め立ての賛否を問う県民投票で同世代が中心となって奮闘する姿に刺激を受け、地元の歴史を学ぶ活動を始めた米須理恵さん(31)=中城村=もその一人。仲間に呼び掛け「GAMA:Project 32nd」(がまぷろじぇくと さんじゅうに)を立ち上げ、沖縄戦について勉強を重ね、写真を使ったアート作品を制作している。

 「戦争と平和が密接につながっていることを感じ、沖縄戦についても考えてほしい」と呼び掛ける。作品は那覇市役所ロビーで展示中。28日から首里城公園内の首里杜館で展示される。

 米須さんは沖国大出身。大学の教員に誘われ、「沖縄アジア国際平和芸術祭2020」の一環で、昨年9月に20代の仲間4人に声を掛けて1カ月で作品を制作した。

 「表裏一体」というタイトルの作品は、パネルの上半分は現在の首里城公園、下半分はその真下にあった32軍壕の写真。回すことができ、見える部分と見えない部分が隣合わせであることを表現。説明文には「相反する2つの面は常に密接に結びついており、いつ何時も、どちら側にも転びうる危うさを帯びている」と記す。

 米須さん自身、32軍壕の存在は知っていたが知識はなく「最初は32軍壕って何よ、という感じだった」。だからこそ「まずは多くの人に知ってもらうことが大事だ」と考えたという。

 昨年10月の芸術祭「首里城再興まぶいぐみアートプロジェクト」の展示会では、作品を見た人のアンケートに「これを見て自分で学ぼうと思った」、「こんなのが眠ってたなんてびっくり。次につながないといけない」といった反応が寄せられた。作品を通じて、思いが少しずつ広がっている手応えを感じている。

 地元の中城などの歴史も同世代とつながりながら積極的に学び、知識を共有する活動にも取り組む。「一人一人が少しでも動くことで世の中を変えていくことができる」とまっすぐに前を見つめている。