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コロナ封じたアジア暗転、変異株とワクチン遅延で【WSJ厳選記事】


アジア・オセアニア

台湾など新規感染が過去最多 シンガポールは厳戒態勢



By Niharika Mandhana
2021 年 5 月 20 日 09:44 JST 更新プレビュー


 【シンガポール】アジアの一部地域は新型コロナウイルス封じ込め策を徹底して世界でもとりわけ高い成功を収め、何カ月もの間、ウイルスが消え去ったかにみえた。ところが現在、複数の国が新たな感染拡大に苦しんでいる。

 台湾は昨年、現地感染者がゼロの状態が8カ月以上も続いていたが、今月17日には1日当たり最多となる333人の感染が確認された。やはり感染を抑制していたベトナムもその前日、過去最多の感染者数を記録した。シンガポールは数日にわたり国内感染者数が2桁の伸びとなったことから、レストラン内の食事を禁止し、学校も閉鎖したほか、社会的な集まりも制限した。タイでは刑務所内の感染が急増。17日の新規感染者数は9600人と過去最多に達し、2020年の合計感染者数を上回った。

 こうした感染増はインドの猛烈な感染拡大や、欧米でこれまでに多数の死者を出したような流行には程遠い。だが、既にウイルスを駆逐したかに見えた地域で発生しており、世界の他国でより感染力の強い変異株が広がり、一部の富裕国以外ではワクチン普及が進まない中、新型コロナを抑制し続けることがいかに難しいかを浮き彫りにしている。

 シンガポールは人口の5分の1超がワクチンを接種済みだが、それ以外の東南アジア諸国の接種率は1桁台にとどまる。台湾では2400万人近い人口のうち、約22万人しか接種が済んでいない。台湾は15日、最前線で働く人々を優先させるため、出張や留学、治療のため海外に渡航する人向けの自費によるワクチン接種を中止した。

 「米国や英国のようにワクチンがある国では、感染者数が減少している。だがその他のほとんどの地域では、たとえこれまで素晴らしい取り組みをしていた国でも、感染が増加している」。ハーバード・メディカル・スクールの感染症専門家で、ベトナムで医療プログラムを運営しているトッド・ポラック氏はこう指摘する。「非常に起こり得ることであり、ワクチンが普及するまで起こり続けるだろう」

 新型コロナとの闘いで確実に実績を上げてきた多くの国で、最近になって空港や隔離センター、病院の防御を破ってウイルス感染が発生している。

 ベトナムの新たな感染経路は、外国から来て指定施設での14日間の強制隔離を終えた後に陽性反応が出た人々にさかのぼる。シンガポールは航空旅客数をコロナ前の3%未満に制限していたが、それでも空港で集団感染が発生した。南アジアなどハイリスク地域からの旅行客を受け入れる区域の労働者にも感染が広がった。台湾で相次ぎ発生した感染は4月下旬、大手航空会社やその隔離用ホテルで見つかったのが始まりだった。

 保健当局者や科学者によると、多くのケースで2つの変異株が急速な感染拡大を引き起こした。シンガポールでは集団感染の多くはインドで最初に見つかった変異株(B.1.617.2)が検出されており、17日に記録された国内症例21件のうち、少なくとも4件はB.1.617.2だった。タイ政府によると、同国の感染拡大に拍車を掛けているのは英国で最初に発見された変異株(B.1.1.7)だ。

 人口9600万人超のベトナムは感染者数およそ4500人、死者37人に抑え、地域諸国の中でも成功を収めた国となっていた。しかし、足元の感染拡大はこれまでより複雑だ。感染は数十の都市や地方で散発的に発生しており、病院から工業地帯に至るまでさまざまな場所で見られる。複数の変異株が広がっている上、昨年と異なり隣国のカンボジアやラオスでも感染が急増し、国境を越える感染のリスクが増している。

 ベトナム保健省の公衆衛生緊急対応センター上級顧問、トラン・ダク・プー氏は「英国型とインド型の変異株は極めて急速に広がることもあり、今回の感染増はより深刻だ」と語った。

 ベトナムの主要都市ではナイトクラブやバー、カラオケ店が閉鎖された。ベトナムは全国的なロックダウン(都市封鎖)は導入していないものの、集団感染が発生したアパートや市街、病院、村、地区を閉鎖している。

 シンガポールの足元の感染拡大は、外国人労働者向けの密集した寮で昨年発生した感染に比べればはるかに小規模だが、それでも一部地区のロックダウン(都市封鎖)に踏み切っている。空港や大手病院、刑務所などでも集団感染が確認されている。

 保健省によると、少なくとも87人の感染はシンガポール・チャンギ空港を中心とした集団感染に関連している。最初に感染が明らかになったのは空港ターミナルで清掃員として働く88歳の男性で、男性はワクチン接種を完了していた。この男性は5月5日に検査で陽性となり、その後に警備員やハイヤー運転手、店舗の販売員をはじめ、空港を訪れた人々の間で感染が見つかった。

 シンガポール政府のコロナ対策委員会の共同委員長、ガン・キム・ヨン氏は14日、「われわれは広く網を張り、発生しつつある感染を検出、隔離、囲い込むため迅速な行動を取った」と言明。「厳重な警戒態勢を敷いている」と続けた。




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