3年前の沖縄・名護の米軍流弾 被疑者不詳で書類送検 県警、発射兵士特定できず


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流弾があった小屋で、弾痕とみられる跡を確認する捜査関係者=2018年6月22日、名護市数久田

 2018年6月21日に発生した米軍キャンプ・シュワブの射撃場「レンジ10」の流弾が名護市数久田の農作業小屋に着弾した事故で、県警捜査1課は28日、殺人未遂と器物損壊の容疑で被疑者不詳のまま書類送検したと発表した。米側からは発生当時、在沖海兵隊海兵遠征軍による実弾射撃訓練が行われていたことなどの回答は得られたが、実弾を発射した兵士個人の特定などには至らなかった。

 県警によると、米側からは「規則を守らずに不十分な手順で発射した銃弾」との説明があったという。県警は銃弾を発射した兵士や銃火器などの情報も求めたが、米側から回答は得られなかった。着弾した農作業小屋は「レンジ10」から北西約4キロに位置し、ガラス2枚と網戸1枚が破損した。発生当時の「レンジ10」では、6月21日午前10時46分から午後0時30分にかけて、実弾射撃訓練が実施されていたという。

あいまい幕引き 地元憤り

 【名護】名護市数久田の農作業小屋への米軍キャンプ・シュワブの射撃場「レンジ10」からの流弾事故は、被疑者不詳のままの書類送検で捜査が終結した。被害関係者や区民らからは「予想はしていた」と冷めた声が上がる一方、「うやむやにしてはならない」「日米地位協定を抜本的に改正すべきだ」など、米軍絡みの流弾事件で繰り返される被疑者不詳での幕引きに憤りの声が上がった。

 「地位協定の壁があることは分かっていたので、驚きはない。大事なのは原因と再発防止策だ」。作業小屋に流弾を撃ち込まれた小嶺雅彦さん(47)は、被疑者不詳のままの書類送検に対し冷静に受け止める。

 現在も事件現場の農園でマンゴーの摘果作業に追われる小嶺さん。周辺では当時と変わらず、米軍の射撃訓練の音が響く。「不安がよぎることもあるが、二度と農園への流弾がないよう訓練マニュアルを徹底する、との米軍の説明を信じるしかない」と語った。

 事件後「レンジ10」撤去を求める意見書と決議を全会一致で可決していた名護市議会。大城秀樹議長は「地位協定を抜本的に改正すべきだ。二度と市民を危険にさらすようなことはあってはならない」と強調した。

 比嘉幹和数久田区長は「過去にも流弾事件があったが、誰が撃ったか分からなかった」と指摘。「農作業中や集落に弾が飛んくるかもしれず、一歩間違えば大変なことになる。区民の安全を守ってもらわないと安心して生活できない」と米軍や日本政府に再発防止策の徹底を訴えた。