完全受注販売の「オリオンザ・ドラフト初仕込」 循環栽培した伊江島大麦使用


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オリオンザ・ドラフト初仕込

 オリオンビール(豊見城市、早瀬京鋳社長)は9日、那覇市内で記者会見し、大麦を軸とした完全循環型産業構築プロジェクトについて発表した。伊江島産大麦を使ってビールを造る過程で生じたビール粕(かす)を堆肥にして、再び大麦を育てた。オリオンビールはプロジェクトの成果として、3月に収穫した完全循環型栽培の伊江島産大麦を使った「オリオンザ・ドラフト初仕込」を7月13日に発売する。

 オリオンビールは2020年6月から、主力商品の「ザ・ドラフト」に伊江島産の大麦を使用している。年間約4千トンが生じるビール粕は、牛の餌や堆肥にするなどしていたが、大麦の栽培にこの堆肥を使ったのは今回が初めて。伊江村の農業生産法人いえじま家族(玉城堅徳代表)が堆肥を活用し、今年3月に大麦約2トンを収穫した。次回は面積を広げて、約120トンの収穫を目標にする。

完全循環型の大麦栽培について発表する(左から)オリオンビールの早瀬京鋳社長、琉球大の殿岡裕樹主席リサーチ・アドミニストレーター、いえじま家族の玉城堅徳代表、街クリーンの赤嶺太介社長=9日、那覇市のホテルロイヤルオリオン

 産業廃棄物処理業などを手掛ける街クリーン(南城市、赤嶺太介社長)グループの農業生産法人八風畑が持つ南城市の畑や、名護市の畑でも収穫に成功した。

 堆肥化については、琉球大が共和化工(東京)とともに研究を続けている。沖縄工業高等専門学校や北部農林高もプロジェクトに加わっている。

 「初仕込」には、伊江島産大麦を副原料として使用する。完全受注方式で、約1万ケースの数量限定で発売する。現在、オリオンビールで副原料として使用している外国産大麦を全て県産大麦に代替するには、乾燥大麦の重量で年間332トンが必要となる。同様に麦芽を全て県産大麦から製麦する場合には同5千トンが必要となる。

 早瀬社長は「日本最南端の沖縄で大麦が栽培できることを証明できた。沖縄の農業の新しい可能性を示すものだ。オリオンビールとしても、県産の大麦を大々的に使っていきたい」と話した。